激闘編
第百九話 前触れ
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帝国暦487年8月25日12:00
ヴァルハラ星系、オーディン、銀河帝国、ヒルデスハイム伯爵家別邸、
ジークフリード・キルヒアイス
ガイエスブルグ要塞が破壊された後、皇帝が死んだ。ラインハルト様はヴィーレンシュタインにて辺境防衛の名のもとに雌伏を選択された。フォルゲン、ボーデンの叛乱軍の攻勢は陽動…そう判断して、ヴィーレンシュタインまで後退したのだ。ラインハルト様の判断通り、叛乱軍の動きはなくなった。時折哨戒部隊同士が接触する事はあっても、戦闘になる事は稀だった。アンネローゼ様をお迎えする為に私がこうやってオーディンに居るのも、ある意味叛乱軍のおかげだろう。だが久しぶりに戻った帝都の雰囲気は、出撃前と少し変わっている様だった。
「元気だったか。息災そうで何よりだ」
「はい。閣下もお元気そうで…お姿を拝見して安堵致しました」
「フフ…卿が心配しているのは私ではないだろう?大丈夫だ。この屋敷にちゃんと居られる。しかし、伯爵夫人が我々と共に帝都を離れていたのは本当に幸運だった」
それからヒルデスハイム伯爵が語ったのは驚くべき事実だった。ベーネミュンデ侯爵夫人が死んだというのだ。
「伯爵夫人が後宮を出られてから、陛下の寵を取り戻そうと足繁く宮廷に出入りする様になってな…別に陛下は侯爵夫人の事がお嫌いではなかったのだ。伯爵夫人が後宮に入る前の件があってから陛下は侯爵夫人を遠ざけられた。だが彼女はそれを自分の失態だと受け止めてしまったのだ…もう十年も前の事だが、そこまで遡らないと話は始まらんのでな」
「あの事とは畏れながら、陛下と侯爵夫人の間に授かった和子…の件でございましょうか」
「そうだ、よく知っていたな…死産だったが、直前まで母子共に順調で、死産を予見出来る宮廷医はいなかったそうだ。陛下は何者かの作為を感じられたのだろう。その後、皇帝と侯爵夫人の間は疎遠になった」
その後アンネローゼ様が後宮に入り、皇帝が侯爵夫人の元に行く事はなくなった。
「彼女も何かを感じ取ったのかも知れない。そして自分を責めただろう、陛下を恨む訳にはいかんからな。そしてその恨みの矛先は伯爵夫人にも向けられたという訳だ」
何も知らない小娘が後宮に入って皇帝の寵愛を受ける…自分の置かれた状況と比べてしまったのだろう、共感は出来ないが理解は出来る…。
「しかし…侯爵夫人は何故死んだのでしょう?」
「自裁を命じられた。陛下危急の時に為すべき事を怠ったという理由だ。陛下が亡くなられた時、彼女はその場に居ったのでな。自裁を命じたのはリヒテンラーデ侯だ」
リヒテンラーデ侯と言った時の伯爵は、まるでこの世ならぬ物を見たかの様な顔をしていた。伯は何かを知っている、そう思わせるに充分な表情だった。これ以上は…話を変えた方がいいかも知れない。
「ところで…次の至尊
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