激闘編
第百九話 前触れ
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の座に着かれるお方はどなたになるのでしょうか」
「エルウィン・ヨーゼフ殿下だ。前の皇太子殿下のご嫡子であらせられるからな。が…皇位に着かれた後で揉めるかも知れん」
「それはどういう…」
尋ねると、伯は大きな笑い声をあげた。
「知らぬふりをするのは止せ。気付いておろうが…帝国は二つに割れる、真っ二つにな。私も説得を試みたが駄目だった。ブラウンシュヴァイク公もリッテンハイム侯も、前のルートヴィヒ皇太子殿下とは対立しておったからな。その子が至尊の座に着くなど笑い話にも程がある、とな…卿、気付いておらんか。外の様子を」
「はい…宇宙港の出発ゲートは貴族の方々が多かった様に思えます。このお屋敷の周りも人通りが少なくなった様に感じました。代わりに軍人達が多くなったかと」
オーディンに着いて感じた違和感の正体はそれだった。軍人の姿が多いのだ。事は急速に進みつつある…。
「畏れながら、閣下はどうなさるおつもりなのです」
「理は政府にある。だが情はいかんともしがたくてな。こうならねばよいとは思っていたが、最早どうしようもない。私はブラウンシュヴァイク公につく。実はな、昨日辞表を出したのだ…卿が来てくれてよかった。卿が来なんだら伯爵夫人と娘をいかにしてミューゼルの所へ送り出そうかと思っていたところだ」
「ご息女…でございますか?」
「うむ。あれには埒のない戦などで命を落として欲しくないのだ。人質にされるのも癪だしな…この後の予定は?」
「ミュッケンベルガー閣下の元帥府へ参ります。その後はもう一度こちらへ参る予定でした」
「そうか。では用事を済ませたら直ぐに戻ってくれ。出立の準備は既に整っておる」
「了解致しました」
ヒルデスハイム伯爵の元を辞し、急いでミュッケンベルガー閣下の元に向かう…ラインハルト様が雌伏を選択したのは正解だったかも知れない。こんな時にオーディンに居たら、どちらの側に着くかで身動きが取れなくなっていただろう。状況からいって政府側に着くのは当然だが、そうだとしても様々な困難は覚悟せねばならなかった。ラインハルト様の簒奪の意思は最早知れ渡っていると考えねばならないからだ。だからこそミュッケンベルガー閣下はラインハルト様を辺境守備に向かわせたのだ…。
元帥府の前に来ると、ここも以前より警衛の数が増えていた。ラインハルト様の部下として来意は告げてあるのにも関わらず、営門で誰何と車両検査を受けた。
「ご苦労。ミューゼルはどうだ。通信で見る限りは息災の様だったが」
「はい、辺境守備の任に精励されておいでです」
「そうか。オーディンの様子も変わっただろう。ガイエスブルグが破壊されてからというもの状況が変わってしまってな…今ではこの有り様だ」
「はい。グリューネワルト伯爵夫人の件の御礼を申しあげる為にヒルデスハイ
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