第138話『VS.鏡男』
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時は少し遡る。
大地と別れた晴登は、大地が優菜を救い出すまでの間、鏡男を妨害する役目を買って出た。そして今、その戦闘の火蓋が切って落とされる。
「……!」
「危ねっ!」
鏡男が右手を振ると床が隆起し、連なる鏡筍が槍のように突き上がってくる。廊下一帯を埋めつくさんとするその猛攻に、晴登はたまらず近くの教室へと飛び込んだ。
その際、裾を引っかけてしまったようで、ドレスの端が破けてしまう。
「……さすがに動きにくいか」
状況が状況だから思わず忘れてしまいそうになるが、晴登は今、潜入任務のために女装をしているのだった。普段歩くだけでも煩わしい衣装が、戦闘になればなおさら鬱陶しい。
「これ以上、衣装を台無しにしたくないんだけど……」
せっかく準備してもらった衣装なのだから、気に入ってるかはともかく、ぞんさいに扱いたくはない。早く着替えたいが、今はそんな余裕もない。
「……」
「……逃げないんだな」
晴登が入ってきたドアとは反対側の、教室の後ろのドアから、鏡男が静かに歩いて入ってくる。てっきり晴登をどかした後、大地の方を追うと思っていたのだが、どうやらこちらを標的として定めたらしい。
あるいは、さっき魔術を使用したせいで正体がバレてしまっただろうか。それならもう女装する意味もないので、なおさら着替えさせて欲しいのだが。
「……来る!」
鏡男が無言のまま、こちらに向かって走り出す。
「はぁっ、"天翔波"!」
晴登はすぐさま迎撃の構えを取り、腕を大きく振りかぶる。肩から指先へ魔力が一気に流れ込む感覚を意識しながら、風を解き放つ。
轟音とともに発せられた突風は、教室内の机や椅子を容赦なく吹き飛ばした。その威力は、かつて雨男をも退けたほど。鏡男相手でも十分通用する──はずだった。
「ごふっ!?」
鏡男に風が直撃したと思った時には、晴登の身体が鈍い音を立てて黒板に叩きつけられていた。あまりに突然の衝撃に、受け身も取れず、肺から無理やり空気が押し出される。
何が起こった。鏡男が攻撃した気配はない。それなのに、晴登の身体は宙を舞い、吹き飛ばされていた。──この現象には、覚えがある。
「"反射"か……!」
相手の能力を思い出し、すぐにその結論に至る。
晴登の放った風は、鏡によって跳ね返されたのだ。
「でもいつの間に……」
攻撃の瞬間、鏡男はただ腕を前に出して顔をかばっただけだった。鏡を生成するような素振りも見せていない。しかし実際に"反射"は発動している。これはまさか──
「……っ!」
思考を断ち切るように、鏡男が再び踏み込んでくる。
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