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Fate/WizarDragonknight
会議室
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「遅い……」

 リゲルは苛立っていた。
 見滝原テックの重役が多く集まるこのフロアへの潜入そのものは、大して難しくない。
 リゲルが持つ青の世界の技術をもってすれば、女性社員への光学変装など容易い。服装を女性社員のものに変更させ、入場カードの偽装も赤子の手をひねるよりも簡単だ。今のリゲルは、立派な見滝原テックの社員であり、それも役員会議に呼ばれ得るスペックにしてある。

「後はアイツが来れば終わりなのに、一体いつまで待たせるのよ……!」

 だが、リゲルの平静な表情は、すでにこの上ないほど崩れている。
 無関係な役員が多いので、可能性は低い。が、万一戦闘になった場合、リゲル一人では心もとない。あまり認めたくはないが、リゲルの戦闘能力はこの化け物揃いの聖杯戦争では高い方ではない。
 だから、優秀な戦闘力を持つライダーの同伴を期待していたのだが、寝ても覚めても彼が来る気配はない。

「どこで何をやっているの……! 城戸真司……!」

 青の世界の技術をもってしても、鏡の中という非科学的な世界の観測方法は存在しない。リスクヘッジのために二手に分かれたことが裏目に出た気がする。
 リゲルは頭を抑えながら、周囲を確認する。
 ハッキングにより、三十分以内にはリゲルが背にしている会議室で役員会議が始まることは判明している。
 それまでには合流したいところだ。
 だが、真司が来る気配は一向にない。それどころか、廊下の奥が騒がしくなり、リゲルは身を隠した。

「あれは……」

 廊下を占拠するように左右に広がる一団。壮年な人物たちの姿に、リゲルは内心警戒を浮かべた。

「あれが見滝原テック社長……」

 ブクブクと風船に手足が生えたように肥え太った、嫌らしい笑みを浮かべている白髪交じりの中年男性。人を喰った目で、常に肩で風を切って歩いており、時折髭を撫でるその手には、無数の指輪が取り付けられている。金持ち趣味に吐き気を感じてきた。
 その周囲にいるのも、彼と大差ない人間ばかりだ。いや、一部にまだ若い青年もいるが、彼らもきっとあくどいことを使ってのし上がっているのではないだろうか。
 彼らのパーソナルデータは全て頭に入っている。名前、年齢、家族構成、経歴など。誰もが表情に違わず金の亡者としての経歴ではないだろうか。
 いや、あの若い役員はどうだっただろうか。
 もう、社長が目と鼻の先まで近づいてきた。
 リゲルは「お待ちしておりました」と社長へ頭を下げる。

「うむ? いつもの彼女ではないのかね?」

 社長は髭を撫でながら尋ねる。
 リゲルは「はい」と頷いた。

「病欠の彼女に代わって、私が書記を務めさせていただきます。各務原(かがみはら)です」
「ふん、頼むよ。分かっていると思うが、くれぐれ
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