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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百八話 皇帝不予、そして混迷
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8月6日20:00
ヴィーレンシュタイン宙域、ヴィーレンシュタイン星系、銀河帝国、銀河帝国軍ヴィーレンシュタイン基地、高級士官クラブ、
オスカー・フォン・ロイエンタール

 「おやおや、観戦武官のお出ましだ」
俺の言葉で皆の視線が一斉にエントランスの方に注がれる。
「真打ちの登場と言って貰いたいな」
ウェイトレスの女性に注文をしながらロイエンタールは深々と腰を下ろした。
「真打ちか。そうであって欲しいものだ。そうでないと皆叛乱軍にしてやられた甲斐性なしの集まりになってしまう」
「まあそう言うなケスラー提督。してやられたのはミューゼル閣下も同じだぞ」
「それはそうだが」
ケスラーをたしなめるメックリンガーも表情は似た様なものだ。
「ところでロイエンタール、ボーデンの状況は」
「平和なものさ。叛乱軍に動きはない。バルトハウザーを残して来たが、増援が到着するまでは奴に任せる」
バルトハウザーはロイエンタールの部下で、派手さはないが堅実で惜しみのない働きをする男だ。ロイエンタールはここぞという場面でバルトハウザーを重用している。
「バルトハウザーなら大丈夫だな。しかし、まんまとしてやられた」
「ガイエスブルグ要塞の事か」
「ああ。叛乱軍が再出兵の宣言をして、誰もがフォルゲンやボーデンに侵攻して来ると思い込んでいた」
「実際にヤン艦隊の増援を確認していたからな。その後に第六、第十三艦隊と現れて、叛乱軍の目的は辺境防衛の俺達の撃破を目論んでいるのだろうと誤認してしまった」
ワインボトルが空くのは早かった。ウェイトレスが新たなボトルとつまみを運んでくる。

 「誤認はそれだけではない。ここに駐留していた有志連合軍の存在が我々の判断を鈍らせた側面もある。有志連合を我々の後詰と叛乱軍が判断しているのではないか、それで彼等の動きが鈍いのも納得出来る…まあ、あらゆる可能性を追求しなかった我々の落度なのだがな」
ケスラーが忌々しそうにグラスをあおる。
「だがその可能性は大いにあったのだ。最終的にはブラウンシュヴァイク公も増援を認めたのだからな。だが時期が悪かった」
我々の会話が聞こえていたのだろう、隣のボックスシートにはいつの間にかケンプ、ミュラー、ビッテンフェルトが集まっていた。軽く会釈をしながらビッテンフェルトが早速不満をぶちあげた。
「今更だが、フェザーンの高等弁務官府は何をやっていたのだ?奴等がしっかり情報を掴んでいれば、こうも酷い状況にはならなかった筈だ」
「そうですね…最近の戦いでは全くと言っていい程叛乱軍の動きが見えなくなりました」
ミュラーがそれに相槌を打つ…確かにそうだ、以前はフェザーン経由で叛乱軍の動きが掴めていたのだが、アムリッツア陥落以降はそれが無くなった。
「フェザーンが明らかに叛乱軍寄りの姿勢を示し
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