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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百八話 皇帝不予、そして混迷
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ているという事だろう」
「ケスラー提督、それがそうとも言えんのだ。帝国とフェザーンとの経済活動は以前より活発になっている」
「メックリンガー提督、卿が芸術より経済について詳しいとは聞いた事が無いが…」
「いや、とある美術商から聞いた話なのだ。アムリッツアが陥ちてからというもの、フェザーンから取り寄せる美術品や絵画の量が多くなったというのだ。フェザーンは叛乱軍との交易を黙認されているが、叛乱軍領域向けの貨物船が減っていて、顧客のほとんどが帝国の貴族や資産家だという」
「しかし運ぶ方も美術館だけでは利益が出ないだろう」
「そうだ。大体美術品や骨董品というのは一度には大量に取引されない。バイヤーが鑑定して本当に価値のある物だけを買う。だから量は少ないし、運ぶ時も荷の明きのある貨物船についでで運んで貰う事が多い。輸送料も船員の小遣い稼ぎ程度で済む」
「それが大量に取引されているという事は…」
「それを運ぶ船が増えているという事だ。主な積荷は武器、弾薬、糧食らしい。他にも装甲部材の原材料とかもあったそうだ」
「武器弾薬だと…納入先は帝国軍ではないのか」
「我々なら国内の兵器工廠で賄えるだろう。それをわざわざフェザーンから買っている連中がいるという事だ」
話してくれた本人も、聞いた皆もすぐ気付いただろう。それほどメックリンガーの話した内容は深刻なものだ。ノーマークでそんなものを買える連中は限られている。貴族だ。

 貴族の私設艦隊の艦艇も基本的には帝国軍の造兵工廠で建造される。貴族が帝国政府に建造を依頼し、購入するのだが、建造された艦艇はまず最初に帝国軍に編入される。損失分を埋める為だ。貴族が依頼した分は後回しになる。私設艦隊が戦場に出る事はそれほど無いし、中々損失が発生しないからどうしても後回しになるのだ。流石に貴族達も正規軍の補充の重要性は理解しているから後回しにされても文句は言わない。中には自領に工廠を持つ大貴族もいる。ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯など、星系単位で領土を持つ大貴族達だ。彼等程の大貴族になると帝国政府には艦艇建造を依頼する事はない。後回しにされるのを嫌う貴族達はブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯に建造を依頼するのだ。帝国軍も大量に建造を急ぐ時には、政府を通して彼等に依頼する事がある。実はこの私設の工廠が曲者だった。この工廠で建造された艦艇数の把握が出来ないのだ。帝国政府が買い上げる形になる分は把握出来ても、貴族達が一体どれ程の艦艇を建造しているのか分からないのだ。

 「貴族達がどれだけ軍備を整えようともどれ程の事があろうか。所詮竜頭蛇尾の輩ではないか」
ビッテンフェルトの言う事は真実だった。ここヴィーレンシュタインに居た彼等が何もなし得なかった事がそれを表している。
「だが一頭の獅子に率いられた羊の
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