第一章
[2]次話
遅れた夏
王道灯は夏が好きだ、大好きと言っていい。夏になると海にも山にも行って花火も祭りも出店もお盆も楽しむ。
そうして満喫しているが今年はというと。
「残念よ」
「仕方ないわね」
病院に入院している彼女にナースの栗脇友利が応えた、すらりとしていて面長で細い目で黒髪をロングにしている灯に対して友利は小柄で茶色の髪の毛はショートで大きな垂れ目で胸は大きい。よく見れば灯が狐で友利が栗鼠といった感じだ。
灯は右足にギプスを巻いてベッドに横たわっている。友利はその彼女の傍に立って応えている。そうしつつ言うのだった。
「骨折したから」
「はい、残念です」
灯は心から応じた。
「本当に」
「夏好きなのよね」
「大好きです、特に今高校夏休みですし」
「尚更よね」
「あちこち行って」
海に山に祭りにというのだ、花火や祭りも頭の中にある。
「思いきりです」
「遊びたいわよね」
「毎年夏はそうしてますし」
「そうよね、けれどね」
それでもというのだった。
「今年はね」
「残念ですけれど」
「入院してね」
「どれだけ入院でしたっけ」
「三週間よ」
友利はすぐに答えた。
「期末テスト終わってすぐにだったのよね」
「はい、部活で思いきりこけて」
陸上部の部活の練習で走っていた時にだ。
「テスト終わったその日の部活で」
「それで底から入院してね」
「今二十一日ですね」
「十日のことだったから」
だからだというのだ。
「あとね」
「十一日ですね」
「八月に入ったらギプス取れて」
そうしてというのだ。
「退院出来るから」
「それまでの我慢ですね」
「そうなるわ」
こう灯に話した。
「だからね」
「その時までですね」
「我慢してね」
「わかりました」
それならとだ、灯は友利に答えた。
「物凄く嫌ですが」
「我慢するしかないでしょ」
「はい」
実際にというのだ。
「本当に」
「だからね」
それでというのだ。
「今はね」
「ここで寝ています、宿題もして」
夏休みのそれもというのだ。
「退院までに終わらせます」
「そうするわね」
「それしかないですから」
だからだというのだ。
「そうします」
「頑張ってね」
「幸い入院したその日に先生から貰いましたし」
担任の先生から入院が夏休みにも及ぶと聞いて答えた。
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