動き出す世界
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ュノア社の苦境は分かっていたけど、ここまでやられちゃこっちも擁護できないってことだよ。分かったかユリア」
「は、はい」
それぞれの上官から言われてユリアが恐縮してしまう。
「既にアメリカからは抗議が殺到。自国の軍事ISが表沙汰になる前にこっちを潰そうって算段でしょうね」
「流石というべきだが、切り札はこっちも相手も同じだ」
「それにこれもあるわ。ジェーン」
「はい」
再びジェーンがヴィクトリアに促されて画像を変える。そこに映されたのはオーストラリアのISとその操縦者。その映像に映し出されているのは何の変哲も無い、一般にも公開されているISだったためロベルティーネでさえ疑問の声を上げてしまう。
「これは? ただの『デザート・ホーク』のように見えるが」
「そ、パッケージを装備した、ただのオーストラリアの『デザート・ホーク』」
「それのどこが問題なんだ?」
「問題は……これの装備しているパッケージが水中用である、ということよ」
その言葉でロベルティーネとフィオナが理解して頷いた。
「なるほど」
「確かにそれはダメだな。豪州も粋なパッケージを考える」
「そう、モンド・グロッソに水中競技なんて存在しないし、水中用を開発する意味もかなり薄い。これを開発してる理由は……」
「軍事利用……か」
「ま、これを元に赤道連合を味方につけることが出来れば、もしかしたら……ね」
「確かについこの間も赤道連合は加盟国を増やしたが……そう上手くいくのか?」
「それを上手くいかせるために私たちが集まったんでしょ? なんのための『イグニッション・プラン』の中心3カ国の代表が集まってるのよ」
ヴィクトリアが右手を軽く振ると映像が消され、暗かった会議室に明かりがつけられる。
「なるほどねー。大胆なこと考えるねー、王女殿下は」
「え、っと。つまりここでEUの大勢を決める……ということですか?」
「そゆこと。ユリアにしては勘がいいな」
その言葉で場が一斉に動き出す。
「了解した。いいだろう。我がドイツはイギリスに協力する。少尉」
「了解です大尉。隊長にもそう伝えます」
世界と対抗するために……
「イタリアもだ。この件に関しては一任されてきてるんだからな。ユリア、本国に連絡入れておいてくれ」
「は、はい! 了解しました!」
「それじゃあ………効率的な脅し文句でも考えましょうか?」
ヴィクトリアの浮かべた妖艶な笑みは、欧州の大勢を決める非公認会議の幕開けを意味していた。
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アメリカハワイ沖。第7艦隊所属、原子力空母
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