第五章
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「何かあってからじゃ遅いのに」
「そうしていますね」
「困ったことだよ」
実際にというのだ。
「本当にね」
「病院、医学から見ると止めたいですが」
「資本主義から見るとね」
企業側からというのだ。
「事件が起きない限りはいい」
「何時起こってもおかしくないと」
「困るよ、しかし狂気は何時か終わる」
医師は言った。
「そして漫画もね」
「何時か終わりますね」
「終わらない作品なんてないし」
「狂気もですね」
「終わる時があるよ」
「その時を待ちますね」
「彼は随分二〇二五年七月というから」
人類は滅亡するとだ。
「それまでね」
「待ちますか」
「そうしよう」
こう言うのだった、そしてだった。
彼とその愉快なお仲間と言っていい賛同者達が関わっている予言の漫画は二〇二五年七月の直前に終わった、それと共に。
彼は急に元気がなくなり抜け殻の様になった、まさに一瞬で廃人の様になり。
会社を辞め印税だの退職金だの精神崩壊し障害者となったので親戚が障害者年金を申請し認められそれで生きる様になった。
病院には入院しなかったが医師はその話を聞いてナースに話した。
「予言が終わって人類は滅亡しなくて」
「それで、ですね」
「彼は終わったよ」
「人類は滅亡しなくても」
「彼はね」
どうなったかというと。
「滅亡したよ」
「そうですね」
「何というか」
医師はさらに話した。
「狂気も終わると言ったけれど」
「何かありますか」
「うん、こうした終わり方もね」
「ありますか」
「そうだね、対象がなくなったら」
狂気を向けるそれがだ。
「もう雲散霧消して」
「抜け殻になる」
「もう狂人じゃなくて廃人になる」
「そんなこともありますね」
「そうだね、そして」
そうなってというのだ。
「もう彼が狂うことはないよ」
「ただ生きているだけですね」
「予言は終わったんだ」
「そして人類は滅亡しなかった」
「そのどちらも過ぎ去って」
そうなりというのだ。
「彼は何もなくなった」
「それで生きているだけになりましたね」
「今日も明日もなくて」
「人間として生きているだけの」
「そうした存在になったよ」
こう言うのだった、そしてだった。
人間社会は動いていった、予言の通りにはならず人類社会は動き続けていた。だが彼はそうしたものは見ていなかった。見ていたものはなくなったのでそうなったのだった。
予言されていた 完
2025・5・28
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