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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百七話 それぞれの想い
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帝国暦487年7月28日14:00
フェザーン星系、フェザーン自治領、自治領主府、
アドリアン・ルビンスキー

 「私です。お応え下さい」

”…私とはどの私だ“

「フェザーンの自治領主、ルビンスキーです。総大主教猊下にはご機嫌麗しく有られましょうか」

”麗しくなどある筈もない。母たる地球が貶められたままではな…計画は進んでおるか”

「はい。帝国の大貴族共への武器弾薬の提供、滞りなく進んでおります。その過程で彼奴等はフェザーンへの経済的依存度を高めております。最早大貴族共はフェザーン無しでは立ち行きませぬ。彼奴等は皇帝の孫達を戴いております故、きっかけさえあれば何時でも反乱に踏み切らせる事が出来ます」

“きっかけか…無論そのきっかけも用意してあるのであろうな”

「左様にございます。事が成った暁には帝国そのものを支配する事が可能になります」

“ふむ…帝国ついてはそれで良い。だが同盟については問題がありそうじゃな。計画の変更は認めたが、上手く行かぬのではな”

「手は打ってあります。いささか時間はかかりますが同盟の為政者達が我が世の春に興じて居られるのも今の内かと」

“ふむ。その言葉を信じるとしよう…ルビンスキー“

「はっ」

”裏切るなよ“


 忌まわしい通信は終わった。あの通信の後は眩しい程の青空が欲しくなる。
裏切るな、か……今の自分は地球を支配する者達にとって一介の下僕でしかない。しかし、未来永劫にわたってそうだろうか? そうであらねばならぬ正当な理由は何処にもない。そもそも地球の復権など何を考えているのか。誰も喜ばぬし、第一、おぞましいだけだ。あの老人達はただ自らの生まれを呪っているだけだ、ただ地球に生まれただけで未来永劫この様な思いをせねばならぬのかと。
…ふん、俺もあの老人達も同じ穴の狢という訳か…さて、誰が勝ち残るかな。帝国か、同盟か、地球か……それとも、俺か……。

 「同盟軍の艦隊がアルメントフーベルに達した模様です」
「情報は本物だった様だな、補佐官。まあ、こちらもそれなりの物を渡したのだ、本物でなくては困るがな」
「はい。おかげで帝国貴族領との恒星間輸送には殆ど影響はみられません」
そう報告する補佐官、ボルテックの顔色は良くない。
「どうした補佐官、加減でも悪いのか」
「いえその…このまま同盟を放置しておくのはいささか都合が悪いのではないかと」
「…何か懸念があるのか?」
「はい。同盟の経済成長率は前年比で二十パーセント超の増加です。既に同盟に投下したフェザーン資本のいくつかが喰われています。この状態で推移すると近いうちにフェザーン資本は閉め出されてしまいます」
「構わん。戦争がこのまま同盟有利で進めば、奴等は本格的に帝国辺境を抱え込む事に
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