第1章 やって来ました剣と魔法の世界
第7話 鎮魂
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軽く、くちづけを行う。もし、その姿を他者が偶然見たのなら、若い騎士が貴婦人に対して、月の光りに照らされた泉の畔で忠誠を誓うシーンと見たかも知れない神聖な場面。
「そうしたら、一度瞳を閉じてから、ゆっくり開いて貰えるかな」
立ち上がりながら、更に意味不明の言葉をタバサに告げる俺。
躊躇う事もなく、ゆっくりと瞳を閉じるタバサ。
……って、これは信用してくれていると思っても良い状況なんでしょうね。
そして、ゆっくりとその瞳を開くタバサ。
瞬間、発せられる驚き。その驚きに因って、俺の術が成功した事が判る。
「俺とタバサの間に霊道を開いた。これで、俺の見た物や聞こえた音を、霊道を通じて送る事が出来るようになったと言う事。
但し、見た物や聞こえた音の全てを送る訳では無しに、俺の方で取捨選択はさせて貰うけど、そのぐらいは構わないやろう?」
猫やフクロウに出来て俺に出来ない訳はない。ただ、今回の場合は、元々開いていた霊道ではそんな情報を送る事が出来なかったみたいなので、俺のやり方で、俺の方から霊道を開いた訳なのですが。
もっとも、この方法で開かなければ、より深い意味の接触。くちびるとくちびるに因る接触を行う必要が有ったので……。
紅と蒼。二人の女神に照らされた彼女の……その一度だけ触れた事の有る部分を見つめて、ため息に似た雰囲気で息を吐き出す俺。何にしても、これで良かったのでしょう。
タバサがコクリと首肯いて肯定してくれる。それに俺の見た物すべてでは、彼女に取って見たくない物も送って仕舞いますから、俺の方で取捨選択させて貰わなければ流石にこんな霊道は開けないでしょう。
キュルケが、あの説明の時に、その事に気付いたから、その能力の事をさらっと流すように言った訳だと思いますからね。
「そうしたら、もう一度、同じように魔法を発動して貰えるか。その時に、俺が聞いた声をタバサにも聞かせてやるから」
俺の頼みに、それまでと同じように透明な表情のまま首肯き、魔術師の杖を構えるタバサ。
そして、小さな声で呪文を唱え始める。
やがて、先ほどと同じように魔術師の杖の先に集まる精霊力。
更に、再び発生する小さき者たちの叫び、叫び、叫び。
しかし、今回は、その魔法が発動される事はなかった。
俺の方をかなり驚いたような雰囲気で見つめるタバサ。
そう。彼女は先ほどの叫びの意味を問いたいのでしょう。確かに、突然、何者かの断末魔の悲鳴が聞こえて来たら誰だって驚きますから。
「さっき、レンのクモとの戦闘中に俺が動けなくなったのは、その精霊達の悲鳴を聞いたからや。
この世界の魔法……タバサ達が使用している魔法は、精霊と契約を交わす事によって、彼らの能力を借りて発動させる魔
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