第3部
グリンラッド〜幽霊船
その頃の2人 〜テンタクルスの頭上にて〜
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テンタクルスの眼球から血液のようなものが噴き出される。なかなかにグロテスクな光景だが、それよりも今の俺には悔しさが胸のうちに広がっていた。
――あいつに先を越された――。
奴が俺よりも魔物に近い距離にいたからというのもあるが、奴も俺と同じ狙いを定めていた事が悔しかった。俺よりレベルの低い人間が自分と同じ思考をしていることが、俺のプライドを傷つけた。
一方、完全に片方の視界を潰されたテンタクルスは、再び声なき声を上げながら、痙攣を起こしたかのように激しく体を震わせている。だが何本もある足は先程よりも動きを鈍らせ、次の行動になかなか移さない。どうやら今ので致命傷に近い傷を負ったようだ。
「もしかして、僕の勝ちかな?」
警戒しながらも嬉しそうに目を輝かせる色ボケ男を、俺は白い目で見ていた。魔物を倒した喜びだけではないだろうことは容易に想像がつく。
だが、この魔物のタフさを侮ってはいけない。まだ余力があるだろうと踏んだ俺は、再び剣を構え直して走り出した。
「もう魔物は倒したはずじゃ……?」
ボケ男の戯言など聞いていられない。それよりも今の殺気に気づいたテンタクルスが、最後の力を振り絞らんばかりに所構わず触腕を振り回してきた。その広範囲かつ無差別な攻撃は、さすが『海の魔神』と称されるだけある。
だがそれでも、以前の俺とは違う。あれから幾度も強敵と戦い、勝利した。その経験は技術だけじゃない。自信もついた事でこれまで以上に力を発揮することが出来るようになった。そしてそれは、ここにいる一般人風情では到底身に付けられないものだ。そんな奴に、この俺が劣るはずがない。
「ライデイン!!」
剣に雷撃の呪文をまとわせ、テンタクルスの眼球目掛けて振り下ろす。以前から試してみようと思った戦術の一つだ。バカザルの母親から、この剣が『稲妻の剣』だと知り、もし本物なら剣に雷撃を纏わせることができるのではと考えた。未だに本物かどうかは分からないが、この様子を見る限り、ただのナマクラではなさそうだ。
雷をまとった剣から繰り出された閃光は目を灼き、刃からは大量の体液を飛び散らせた。
幸い雷撃は魔物の体までは至らず俺たちまで感電することはなかったが、それでも局所的にダメージを与えたことで相当の深手を追わせることができた。現に今の攻撃により、さらにテンタクルスの動きが鈍くなった。もがく体力すらなく、視界も奪われ、もはや虫の息となっている。
そんな瀕死の魔物を足場にしながら、俺は躊躇うことなく次の呪文を唱える。
「イオラ!!」
トドメに今回最大出力の爆発呪文を魔物に浴びせると、テンタクルスは断末魔の悲鳴を上げながら完全に事切れた。
だが、当然ながらテンタクルスを足場にしていたため、
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