第3部
グリンラッド〜幽霊船
その頃の2人 〜テンタクルスの頭上にて〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
落とすことも厭わない」
駄目だ、今のこいつに何を言っても通じない。そんな事を考えていると、色ボケ男の体を締め付けようと背後からテンタクルスの触腕が襲いかかる。だがこいつは振り向きもせずその場でジャンプし、別の足に飛び移った。
「ちなみにこの前、彼女に告白したよ」
「――!!」
「返事はまだだけれど、満更でもない様子だったかな。だから、諦めるなら今のうちだよ」
――その瞬間、俺の意識は暗転した。
あいつへの想いは断ち切ったつもりだ。あいつが色ボケ男に何を言われても俺には関係ない、そのはずなのに。
血が逆流し、抑えていた感情が爆発する。
「なんでお前ごときに譲らなきゃならないんだ!!」
そう口走りながら俺は、テンタクルスの攻撃をジャンプしながら次々と避けていく。腸が煮えくり返るほどの怒りは、知らぬ間に自身の回避能力の向上を促した。
「言葉が間違ってるよ。『譲る』ってのは自分のものを他人に渡すことだろ。ミオは君のものじゃない」
「お前のものでもないけどな!」
間抜け女の横にいるときのこいつは、ただの優男にしか見えないが、本性はこんな事を平気で言い放つほどの腹黒男だったのか。しかも俺を見下すような言い方しやがって、余計に腹が立つ。
この男が間抜け女に告白したという事実は、本当なのか。虚栄を張ってる可能性もあるかもしれないが、わざわざ確認するのも馬鹿馬鹿しい。テンタクルスの吐き出した墨を躱しながら、俺は疑念を払い除けた。
「まあ冗談だと思ってる君には関係ないかもしれないけどね」
俺の心を覗き込んだのか、こいつはまたしても俺の逆鱗に触れるようなことをほざく。さらに、邪魔者をはたき落とそうとその触腕で何度も海面を叩きつけるテンタクルスの攻撃を苦も無く躱し続けながら、掴みどころのない笑みを浮かべている。自信めいた様子をあえて俺に見せつけている姿が余計に腹立たしく思えて、俺は怒りの矛先をテンタクルスに変えて魔力を掌に集中させた。
「イオラ!!」
色ボケ男――の後ろにあるテンタクルスの眼球に向けて、俺は呪文を放った。魔物は人間には聞き取れない声を発しながら、のたうち回るように激しく動き出した。振り落とされないよう、俺は足元に力を込める。
揺れが収まった瞬間、俺は深く足を踏み込むと、弾力のあるテンタクルスの体を利用して勢いよくダッシュした。
矢のように駆け出した俺が目指すのは先程呪文を当てた眼球。剣を構え直し、あと数歩の所で間合いまで詰め寄った瞬間、突然視界の脇にいた色ボケ男の姿が消えた。
「なっ!?」
反射的に上を見上げると、色ボケ男が跳躍した。その瞬間、奴は俺と同じ標的に向かって飛び蹴りを放っていた。
鋭い衝撃音とともに、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ