第二章
[8]前話
「これまで心臓のことばかり考えていてね」
「お金のことまではなの」
「私考えてなかったわ」
そうだったというのだ。
「実は」
「そうだったのね」
「お父さんとお母さんお金大丈夫だったのかしら」
このことが気になってだった。
実際に両親に尋ねた、すると。
「最初から用意していたんだ」
「コツコツ貯金してね」
両親は娘に答えた。
「確かに高かった」
「心臓の手術だからね」
「けれど当然だ」
「お金を用意するのはね」
「当然?」
保奈美は両親のその言葉に問い返した。
「どういうこと?」
「保奈美のことだからな」
「私達の子供だからよ」
両親は即座に答えた。
「だったらな」
「お金を用意するのは当然よ」
「高いと言っても何でもなかった」
「そう思わなかったわ」
「人は大切な人の為にはお金は惜しまないんだ」
「少なくとも私達はそうよ」
こう言うのだった。
「貴女にも麗子にもね」
「何かあったら使う」
「心臓のこと以外でもね」
「これからもそうしていくぞ」
「人は大切な人の為にはお金を使うのね」
保奈美は両親の言葉を受けて言った。
「そうなのね」
「お金は大事でもな」
「命はもっと大事でしょ」
「お金はまた手に入れたらいい」
「けれど命はそうはいかないからね」
「そうなのね、じゃあ私も」
保奈美は両親の言葉に感じ入った、それで言った。
「大切な人にはそうしていくわ」
「私も」
保奈美の横でじっと輪を聞いていた麗子も言った。
「そうしていくわ」
「そうしてくれよ」
「人としてね」
両親は麗子にも言った。
「お金は大切な人の為に使ってね」
「命を助ける為にな」
「いざという時はね」
「惜しいなんて思わないでくれよ」
「うん、そうしていくね」
「私達もね」
麗子だけでなく保奈美も頷いた、そうしてだった。
姉妹はそれぞれそうした人になった、お金を大切な人の為には惜しまなくなった。そしてお金ではなくもっと素晴らしいもの、命や愛情を守ったのだった。
心臓が治るなら 完
2025・5・22
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