激闘編
第百六話 焦燥
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い。しばらくは状況は動かない筈だから」
「はい、ありがとうございます!」
ユリアンがシャワーに向かった事を確認して、大尉が再び口を開いた。
「ユリアンは将来有望な子ですわ」
「そうだね。でも私はユリアンを軍人にしたくはなかったんだよ。軍人なんかで才能をすり潰して欲しくはないからね」
「そうなのですか…何故許可なさったのです?」
「私やウィンチェスターに憧れているらしい。私達の役に立ちたいと言うんだ…ユリアンの学校の成績なら、士官学校にも行けただろう。でもそうなると私の被保護者という立場だ、色々辛いだろうと思って、軍属という形にしたんだよ。許可した場にはキャゼルヌ先輩やウィンチェスターも居たんだが、彼等も熱心に勧めるものだから、本人の希望もあるし仕方なく認めた、という訳さ。でもさっきのユリアンの推論を見る限り、正式に軍人にするべきなのだろうな」
「ユリアンならきっと大丈夫ですわ、閣下が心配する様な困り者の軍人にはならないと思います」
「ありがとう、大尉……辞令を用意してくれるかな」
「了解致しました」
大尉が辞令の準備の為に部屋を出て行くと、ヴィジフォンのコール音が鳴った。ラップからだ。
“ミッターマイヤー艦隊は後退に移った。おそらくミューゼル大将の本軍と合流するのだろう、これからが本番だな“
「了解した。他には」
”ビュコック長官からフォルゲン星系に移動後再編成の指示が出ている、ああ、既に示達済みだ。艦橋も交替で回すが、それでいいか”
「ああ。お前さんも休んでくれ」
“無論そのつもりだ。じゃあな”
ラップからの報告が終わると部屋の中を静寂が支配する…ビュコック長官の用兵は見事だった。堅実で隙のない用兵。犠牲も少なかった、兵士達からの人気が高いのも頷ける。まあ直接指揮を執られる以上、私ごときが口を出す事はないんだが……それにしてもだ、進攻軍はガイエスブルグ要塞を目指しているという。その上ハーン占領と来ている……確かに帝国、敵の心胆を寒からしめる事間違いない作戦だ。ハーンはまだ分かるがガイエスブルグ要塞とはね。確かに帝国の武威の象徴ではあるが…地球時代、東洋の兵法でこういった軍事行動を中入りと称していた。敵の裏をかき、敵中深く攻め込む…主戦場を陽動として敵の柔らかい所を突く、博奕の様にも見える作戦…。帝国軍はどう対処するのだろう、位置関係からいって、帝国には対処の時間的余裕がない様に思える。進攻軍の作戦が成功したなら、帝国はどうなるのだろう?ガイエスブルグ要塞が陥ちるとなると、その衝撃はイゼルローン要塞やアムリッツァの比ではない筈だ。何しろ同要塞は帝国の内懐にあるのだ…。
辞令書を手にしたグリーンヒル大尉が戻ってきた…二等兵曹ユリアン・ミンツか。素直な子だ、大尉の言う様に困り者の軍人に
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