第二章
[8]前話
「虫が多いのよ」
「そうなんだな」
「だからね」
妻は夫にさらに話した、食べているカレーはポークカレーである。
「もうこのことはね」
「仕方ないな」
「ええ、他は何も悪いことはないし」
「駅もスーパーもコンビニもすぐそこだしな」
「市役所も郵便局もね」
「病院だってだしな」
「お家自体もいいし」
それでというのだ。
「特にね」
「何もないな」
「虫が多い位ね」
「そうだな、完璧という訳にはいかない」
何もかもが満ち足りているということはというのだ。
「虫が多い位はな」
「何でもないわね」
「そうだな、じゃあこれからもな」
「ここで暮らしましょう」
「そうしような」
「ここいいところだよ」
カレーを食べるのに夢中だった息子が言ってきた。
「虫が一杯いるからね」
「そういえば恭也は虫が好きだったな」
「大好きだよ」
息子は父に笑顔で答えた。
「どんな虫もね」
「おもちゃも沢山持ってるしな」
虫のそれをというのだ。
「ここに虫が一杯いてか」
「嬉しいよ、山にも川にも沢山いるしね」
「色々な虫がか」
「カブトムシもクワガタもいるし」
子供に人気のある虫達もというのだ。
「バッタやコオロギもいるし」
「とてもいいところか」
「ずっといたいよ、川でミズカマキリやタイコウチだっているんだよ」
こうした虫達もというのだ。
「ずっといたいよ」
「ずっとか」
「うん、ずっとね」
「そうなんだな」
「よくわかったわ」
恭介も理恵も我が子の言葉に微笑んで頷いた、そして実際にずっとこの家で暮らした。息子も大学を出て就職して結婚してからも独立したが家はこの住宅地に置いた。一家はここに暮らして何の不満もなかった。
マイホームの穴 完
2025・5・18
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