第116話 辺境病
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
クがお前さんを『運とコネがあるだけのボンボン』と言っておったが、お前さんの方でも『無能非才の女誑し』と、そう思っていたというわけか。なるほど、なるほど、ハハハッ」
音を立てて、太い太腿を包んでいるスラックスを叩き、腹を抱えて笑う姿は、居酒屋にいる壮年のおっさんそのものだ。
「オブラックの言うように、お前さんが『ただのボンボン』だとは、私は到底思わんよ。運とコネだけでは士官学校首席にはなれんし、コネだけではその若さで先任中佐には到底なれん。だが同時にな、オブラックもただの『無能非才の女誑し』というわけでもない」
「それはまぁ、そうでしょうが」
補給基地の現在の惨状が証拠ではないかと思うが、俺の知らないオブラックの数年をサトミ大佐は知っているのだから、一概に否定はできない。
「お前さんは前職でっ、どう思ったかは知らんが、あぁ見えてオブラックはっ、人を使うのが実に上手い」
まだ可笑しさがぶり返してきたのか、ところどころで痞えながらサトミ大佐は応えるが、流石に辛くなってきたらしく、数度の深呼吸で息を整え、残りの玉露を飲み干して気持ちの落ち着きを取り戻した。
「どこが自分にとって重要なポイントかを見抜き、関係する人が欲しがるものを見抜き、言葉巧みに自らの仲間や部下として引き込んで、その能力を自分のモノとして使っていく。その手口はなかなかのものだぞ?」
サトミ大佐の言葉に俺は背筋に嫌なモノを感じた。つい最近まで同属の中でも究極の生命体の近くにいただけに、オブラックが卑小に見えていただけなのかもしれない。しかしサトミ大佐の言うとおりであるならば、この補給基地における不作為はどう説明できると言うのか。
「ただ自分の利益にならない相手には実に無関心だ。特に性別はオブラックにとって極めて重要なファクターになる。そういう意味では貴官が女性でなくて本当に良かったな。もしそうなら今頃、彼ご自慢のベッドルームで横になっていたかもしれん」
想像するだけに気色悪い話だが、頷ける話でもある。ケリムの時も女性を近くに侍らかしていた。ドールトンもその一人であったし、今でも狙っている可能性は十分にある。それは性欲的な目的もあるだろうが、それとは別にドールトンの持つ能力と情報を欲している可能性が高いということか。
同属の怪物との違いは、自分の利益にならない相手すら『利益を生み出すように』操ろうとするか否かだろう。これは根本的な能力のボリュームの差だ。そのあたりは自分の能力の限界というものをオブラックは自覚しているのかもしれない。そして自身の欲望が性欲的なものに片寄っているのも恐らく自覚している。原因は何かわからないし、理解したいとも思わないが、それを武器として最大限利用している。
だからこそギシンジ大佐のようなマッチョで自分の能力に自
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ