暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
新元素争奪戦
スペツナズ その1
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発できる素地があると世界に示すことができ、なおかつ軍用機開発のノウハウが失われていないことを証明したからだ。
ただ、ジャンボジェットのような大型機が一般化する時勢に乗り遅れた、時代のあだ花的存在と言えよう。 

 マサキはエンジンの振動に揺られながら、かつての世界であった東京急行の事を思い起こしていた。
 東京急行とは、ソ連空軍による防空識別圏への侵入、領空侵犯を指す言葉である。
 日本周辺を偵察飛行し、東京まで近づくコースが多かったことから在日米軍が呼び始めたと言われている。
わざと防空識別圏に侵入し、航空自衛隊や在日米軍の対応の能力、電子情報を収集するほか、政治的な示威行動も含まれた。
 このような対日示威行動は、冷戦期のソ連だけではなかった。
古くは化政年間(1800年代初頭)の頃、蝦夷地を襲撃し、そこにいる漁民や土民を拉致する事件を起こしたことがあった。
 後に文化露寇と呼ばれるこの行動は、日本側に大きな衝撃を与えることとなり、幕末の尊王攘夷運動の遠因の一つとなった。
 また日露戦争中、ロシアのウラジオストック艦隊は東京湾近海に進出し、日本に向かう船を沈めたり拿捕したりする通商破壊戦を行っていた。
ロシア海軍の動きを察知した帝国海軍は迎撃部隊を送るも、補足できず、制海権を維持できなかった。
 この事案では、特に玄界灘で起きた常陸丸事件の衝撃は大きかった
政府への批判と海軍への責任追及となり、第二艦隊の上村彦之丞中将に非難が集中した。
 第二艦隊は、「露探艦隊」と呼ばれ、上村は自宅に投石をされた。
彼は日本海海戦で汚名を(そそ)ぐことになるが、今回の話に関係ないので割愛させていただく。

 東京急行の場合は、砲火を伴わないにらみ合いが主だった。
しかし、日本側の迎撃機にはミサイルや機銃弾の実弾を装填しており、ロシア機も武装している。
 互いに相手の出方を探り合う緊張は戦争と変わりなかった。
緊急発進(スクランブル)任務では肉眼で目標を確認し、写真撮影することが原則だったので、かなり接近しなければいけなかった。
ソ連の大型機Tu-142の乗員からも日本側の姿が良く見て手織り、要撃機のパイロットの写真を撮ったり、手を振ったりする姿を見られたという。

 YS−11で函館空港に着いたときには、すでに9時前だった。
空港職員の手引きで、ターミナルビルにあるラウンジに招かれると、そこには函館警察の署長と赤い斯衛軍の制服を着た若い男が待っていた。
 憲兵隊や、陸海軍の関係者がいないところを見るといろいろ難しい事情の上にあることがマサキには察知できた。
 署長はマサキ達に一礼をした後、口を開いた。
「1時間前、情報省経由で、CIAから、プロの工作員が数名潜入したのと、FAXで連絡を受けました。
参謀総長の拉致
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