第三部 1979年
新元素争奪戦
スペツナズ その1
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帝国陸軍のUH-1多目的ヘリコプター"ヒューイ"は、巡行速度200キロメートルで北関東に向かっていた。
払暁の赤く変わりつつある山々を通り過ぎると、やがて台地や低地からなる平野部が見えてきた。
20キロメートルほどそんな景色が続く中、機体は高度を下げていき、低空飛行に入っていった。
「着地5分前」
操縦士が無造作に告げてくる。
「諒解」
白銀は、いつもよりもやや甲高い声で応じた。
ヘリコプターの中は騒音でひどく、高い声でないと聞こえないからだ。
「あと2分」
ベトナム戦争やラオス内戦に参戦した経験が、反映されているのだろうか。
そんな事を考えながら、マサキは空を見上げた。
全体的に黒さが残っており、東の方角から金色に輝く太陽が上がり始めている。
嵐山渓谷の下の方を見ると、既に橙色に染まっていた。
「30秒」
マサキは装備を確認する。
「目標地点到着」
絶え間ない操縦士の通告がまるで警報音のように感じる。
機体はすべるように、入間基地の滑走路に設置した。
UH-1より巡航速度が速く安定性のあるYS-11に乗り換えようとして寄った埼玉県の入間基地で、マサキは思わぬ事態に遭遇していた。
一個編隊の国籍不明機が、北海道近海の防空識別圏に侵入しているとの一報が入ったからだ。
滔々とサイレンが鳴り響き、飛行服姿の男たちが基地の中を駆け抜けていく。
秒を争う緊急出動、ここでの遅れが取り返しのつかない事態になりかねない。
格納庫から出た機体のアフターバーナ―が点火し、次々と要撃機が空に上がっていく。
基地の滑走路で、静かにマサキはその様子を見守っていた。
初めて乗るYS−11は、双発プロペラ機だけに狭く、今までの旅客機の中で最悪の乗り心地だった。
マサキは、ずっと耳栓を付けて、その景色を眺めていた。
もっとも一度エンジン動き始めると、もう隣とは会話ができないくらい騒音が酷かった。
大型のプロペラによる振動の為、雲の中に入っただけで、体が浮くような浮遊感をよく感じさせる。
YS-11は軍用機を設計した人間が作った機体であったので、商業機のような細やかな気配りがなかった。
カナダのボンバルディアのような機内の騒音低減装置も無いので、当然うるさい。
最大に上昇しても20,000フィートまでなので、天気が悪いと当然揺れる。
温度調整能力もそれはど良くないので、夏暑く、冬寒いのは当たり前だった。
(参考までに、1国際フィート= 0.304800609601219メートル。
なお現在でも、ロシア・中国などの旧共産圏ではメートル法である)
YS-11の日本の航空機産業に与えた影響は、必ずしも悪い物ばかりではなかった。
戦後10年以上のブランクがあってもなお、航空機を独力で開
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