白き極光編
第1章
フラッグ・オブ・ストラグル
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用して築かれている。
「あそこだ」
ロックの指差した先に山脈の内側に食い込むように窪んだ部分があり、目立たないが人工的に補強された洞窟の入口が見えた。
「おぉ、ロック! そちらはフィガロ王ですな? バナン様がお待ちです!」
待ちわびたと言わんばかりの勢いで見張りのリターナー兵が内部へ招き入れる。
リターナー兵は一様にゴーグル付きの茶色いヘルメットを被り、黒シャツの上に青いベストを羽織っている。
案内された先に、その男はいた。
ライオンの鬣を彷彿とさせる髪と、胸まで覆う程の立派な髭を蓄えたこの男こそ、リターナーの指導者、バナンであった。
緑を基調とした神官服に薄茶色のマントを靡かせる威風堂々たる姿は、確かに指導者としての威厳を感じさせるものがある。
「よくぞ参られたフィガロ王。…そちらは?」
「ドーモ、バナン=サン、はじめまして。コールドホワイトです」
コールドホワイトは両の掌を合わせてオジギした。
「これはご丁寧に…なるほど。貴公、ニンジャか。…そして、その少女が…」
コールドホワイトに頭を下げたバナンは、次いでティナへ目を向けた。
見定めるかのような気迫の宿る瞳に、ティナは一瞬気圧された。
「ティ、ティナです…」
「ふむ…氷漬けの幻獣と反応したと聞くが…」
バナンの視線は鋭いまま。
まるで視線その物を刃物として、そのまま突き刺さんとするばかりだ。
無意識に1歩下がったティナを見かね、エドガーが間に割り込んだ。
「バナン様、彼女は帝国に操られて…」
「おおよそ聞いておる。僅か3分で帝国兵50人を皆殺しにしたという」
その言葉を聞いた瞬間、操られている間に視覚が捉え、脳に保存されていた光景がフラッシュバックした。
辺り一面の焼け野原、全身を炎に包まれて悶え苦しみ、のたうち回り、そして息絶えていく人間の姿。
「いやぁぁぁーーーっっっ!!」
ティナは頭を抱えてその場にへたり込む。
「バナン様! そのような事を言わずとも!」
ガタガタと震えるティナの肩をロックが抱き、エドガーはバナンに苦言を呈した。
「逃げるな、ティナよ! …こんな話を知っておるか?」
エドガーの声をかき消すような一喝の後、バナンはティナへ歩み寄ってその隣にしゃがみ込んだ。
「…人々の中に邪悪な心が存在しない時代…そんな時、決して開けてはならぬとされた箱があった。だが、1人の男がその箱を開けてしまったのだ」
立ち上がったバナンは、部屋の中をゆっくりと歩き回りながら言葉を続ける。
「嫉妬、妬み、独占、破壊、支配…ありとあらゆる邪悪な心が飛び出し…それ以来人々の心には邪心が巣くった。しかし…しかしじゃ」
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