Part3/ミノタウロスを追え
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タバサの提案した作戦というのは、イルククゥを可能な限りジジの容姿に近づけて囮にして獲物を引きずりだろうというものであった。イルククゥの髪はタバサよりも深い青色だったのだが、今はジジそっくりに仕立てるために彼女の衣服を着込まされ、空や水を思わせる深い青色の髪も茶髪に染め上げられていた。その上生贄らしい演出のために縛り付けられていた。
当然ながらイルククゥはこの案に乗りつつも不満が顔に表れていた。いつかタバサに噛みついてやろうとその顔が物語っている。
「いいのかい?こんな手口で」
茂みの中から、洞窟の前にて縛られ放置されたニセジジ、もといイルククゥを見ながら、シュウはタバサに言う。
「他に手はない。私ではジジに化けきれない。あなたたちにもジジを演じることはできない」
「そうだな。さすがにスクウェアクラスの魔法〈フェイス・チェンジ〉でも顔は変えられても、声色や体形までは変えられないからな」
「…やむを得ないか」
いくら少女二人の身を想っても、シュウには女装をするという屈辱までは背負えなかったし、ラルカスも背負いたくてもそれができない。イルククゥがかわいそうだが、シュウとラルカスも他に案がなかった以上、タバサの案をありがたく受け入れる以外になかった。
洞窟は高さ5、幅3メイルほど。中は光が全く差さない真っ暗闇。奥から今にもスペースビーストでも飛び出してきそうなくらいの恐怖感を煽ってくる。イルククゥもおそらく怯えているだろう。かすかに息遣いがそれで荒くなっているのが聞こえる。
すると、がさっと草木が揺れる音が、シュウとタバサ、そしてイルククゥの耳に入る。洞窟の中ではなく、だ。
来たか、とシュウとタバサは茂みに隠れたまま身構える。
月明かりと共に、それは姿を現した。手に大きな斧を握った、大きな牛の顔をした異形…
ミノタウロスだ!その姿を見てイルククゥは悲鳴を上げだした。
「助けてなのね!お姉さまぁ!」
「…」
シュウは銃…ディバイドシューターを手に握り、茂みの中からミノタウロスに銃口を向け構える。ラルカスも杖を手に握っていた。だが、タバサがまだ撃つなと言うように杖の先を、二人の前に突き出す。
「まだ撃たなくていい」
茂みの外から聞こえるイルククゥの必死の命乞いが聞こえているはずなのだが、彼女は全く慌てていなかった。シュウも一瞬、イルククゥの助けを求める声に反応しかけていたが、タバサが全く慌てずにいる理由をすぐに理解した。
「あれは…なるほど」
ラルカスは凝視して、どこか納得した声を漏らした。
現れたミノタウロスだが、その姿は…シュウの想像を超えるどころか、それ以上に随分小さいものであった。せいぜい2メイル…身長2m程度しかない。それに、ナイトレイダーという仕事柄、夜目に慣れていたこともあったかもしれない。目視しているミノタウロスが
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