Part3/ミノタウロスを追え
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…異様に手作り感のある着ぐるみにしか見えなかった。
そういうことか、とシュウは察した。ジジの一家が受け取ったあの手紙の内容と、タバサたちの知るミノタウロスの生態知識……おそらく、少なくともあのミノタウロスは…まがい物だ。
縛られたままのイルククゥは、そのミノタウロスに担がれて洞窟の奥の方へと歩いていく。タバサは連れが連れて行かれたのを見ても、まだじっと動かなかった。シュウもそれに合わせて、銃を構えたまま茂みに身を潜める。イルククゥたちの姿が洞窟内へ完全に入ったところで、タバサが先に茂みから出ていた洞窟入り口の淵へ、シュウも後に続いてその反対側の淵へ移動。中にいる偽のミノタウロスに見つからないように隠れつつ中を覗き込む。
奥の方でぼうっと松明の灯りが灯る。耳を澄ませると、話し声が聞こえる。男の声だ。
「こいつ、ジジじゃねぇぞ」
「ってことは、付けられたか。おい、どうするよ?この女エズレ村の回しもんじゃねぇか??」
ニセジジの正体がバレたようだ。
やはりかと、シュウは先ほどのニセミノタウロスを見た時の予想が当たったことを確信した。連中はジジを狙う人売りだった。タバサが先に茂みから出て先行する。
「私が先行する。あなたは銃撃で援護、ラルカスはミノタウロスの出現に備えて待ってて」
「了解」
シュウは援護の依頼を引き受け、麻酔弾を装填したディバイドシューターを構えなおす。だが一方で、ラルカスから何故かすぐに返事が返ってこなかった。
「ラルカス?」
「…っぐぅ!!」
タバサが顔を覗き込んだ途端、ラルカスは頭を抱え、苦悶の燃えを漏らし膝を付いた。
「大丈夫ですか?」
シュウがラルカスの顔を覗き見ながら容体を尋ねる。夜であるせいで伺いにくいが、月の光でラルカスの脂汗で塗れた青ざめた顔が確認できた。
「…ん?あぁ、済まない。持病の頭痛癖だよ。以前ミノタウロスを退治したとき以来からずっとこんな調子だ。何、独自で開発した頭痛薬を常備しているから心配いらない」
そういいながら、ラルカスは小瓶を取り出し、その中に詰められていた丸薬の一粒を口の中に放り込んだ。確かに保健室などで嗅ぐ薬品臭い匂いが瓶から漂う。
「それで、何と言っていたんだ?」
小瓶をしまいながら、改めて作戦の流れをラルカスは問う。
「俺とタバサが中に入る。あなたにはここでいったん待っていてほしい、とのことだ」
「わかった、ここで待って居よう。だがくれぐれも無理はするなよ、二人とも。ミノタウロスでなかったとしても、油断しないように」
「ご自分の体調不良も忘れなく」
すぐに返事が出ず、なぜか一呼吸分の沈黙が漂うラルカス。タバサに名を呼ばれて気が付いたようだが、シュウから改めて説明を入れてもらい、作戦の流れを今度こそ把握する。
ラルカスから確認を取ったところで、タバサが先に入って
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