第2話 異界の住人
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に入って」
「分かったわ。それじゃあ、おっ邪魔っしま〜〜す♪」
契約者に止めをさせる嬉しさからか、どこか楽しげな口調と共に部屋に入る悪魔。その後ろでどうやってこの悪魔の隙をつくか、忍は必死で算段を立てる。
少年が眠る部屋は、客室の一室を臨時に少年の治療室としたため、クローゼットや少人数が座る事を想定した机、イスなど最低限の調度品と簡素なベッドしかない。今はそのベットに問題の少年が横たわっていた。
そして、やはりと言うべきか彼は目覚めていなかった。ニット帽が外されたため、幼いながらもどこか鋭く、野性的な印象を受ける顔があらわになっている。治療を受けた後のためか呼吸は安定しており、規則正しく胸が上下しているのが見えた。
そんな少年を部屋に一歩踏み入り、その視界に収めた途端、忍の一歩前にいる悪魔が突然震え始めた。マグマの噴火の様な、何か我慢していたものがあふれ出る直前の様子に、忍は思わず手を伸ばし動きを止めようとする。
あと少しで手が届く、その瞬間に悪魔から声が漏れるのを忍は聞いた。
「き…………」
「き?」
「きゃぁぁぁぁぁぁ! ジュンゴったらこんなに可愛くなっちゃって! 前々から可愛い可愛いって思ってたけど、ついに体までこんなに可愛らしくなっちゃったのね!!
はっ、これはご褒美ね! いつも頑張ってる私にジュンゴからのサプライズプレゼントね! それなら遠慮しないわ! おねぇさん思いっきり抱きついちゃうわよ〜〜〜?」
悪魔…いいや、リリムが黄色い悲鳴上げながら彼に突進した。そのせいで、忍はバランスを崩し、手を伸ばした状態のまま盛大にずっこけた。
もろに打ちつけた鼻柱を押さえながら、何が起こったのかをよくよく考えてみた。
まず彼女の発言を思い出してみる。『愛しの』、『心配』などなど彼女の発言を思い返してみれば、確かに彼に敵意が向けられるという事はなかった。
自分たちが、彼女のいかにもなしぐさや強者の雰囲気にあてられて、必要以上に警戒をしてしまっただけだったのだと、ようやく理解できた。
これほどまでに弱者が強者の前に立つと、強者の思いを勝手に推測し、勘違いしてしまうものなのか。
???これが、“夜の一族“を見た人間の気持なのかもしれないわね。
少し自分たちをみる他者の気持ちが分かったような、そんな事を考えながら、忍は絶対安静だと言っていたのに、少年に抱きつき頬擦りするリリムを止めるために歩を進めていった。
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