第2話 異界の住人
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ど〜。それってずるいと思わない? むしろ、私にとってとても大事な事があるからそれをまずは聞きたいんだけど」
「…………大事な事って、何かしら」
「2つあるわ。1つ、あなたがその携帯をどうして持っているのかしら?2つ、その携帯の持ち主はどこにいるの?」
「か、……彼なら、妹が見つけて別室にいるわ。ひどい怪我を負っていたから、応急処置をして安静にしてもらっているわよ。」
目を細め、威圧感を強めて質問を発する彼女。
嘘をつくことを許さない、そんな雰囲気にのまれ、忍はつい本当の事を答えてしまった。
「あっ、そうなの。妹って、そっちにいるニンゲンの事よね? ありがとうね〜、私の“ご主人様”を助けてくれて。」
「い、いえ……。」
「じゃあさじゃあさ、私が行ってもいいでしょ。ご主人様のことはちゃんと自分の目で確かめないとね〜〜」
「私って忠義者よねぇ〜」忍達の目の前で軽いノリでそう言う彼女。忍は、彼女の言葉に一抹の不安を覚え始めた。
その不安を確かめるために、また彼女を不機嫌にさせないよう、恐る恐る慎重に尋ねてみる。
「どうして、彼に会いたいの?」
「さっきも言ったじゃない、自分の目で確かめたいって。契約切れてないから死んでないのは分かるけど、どんな状態かは自分の目で見るまで分からないから心配なのよ」
ゾワリ、とその返答に姉妹は腹の中から嫌なものがこみ上げてくるような感じを受けた。
彼女と彼は契約を交わした関係。なら、少年が死んだら契約から解放されるのではないか?自由になった彼女は、自分たちを襲ってくるのではないだろうか? いくつもの疑念が首をもたげ、その度に忍達を不安に陥れる。
そうなれば、今は眠っていて何も抵抗ができない(もっとも、動けても彼女に勝てるのかははなはだ疑問だが)少年に彼女を会わすのは絶対に避けねばならない。
それに彼を犠牲にするのは、人として避けたいところだ。妹が助けたということもあるし、何より身代わりによって自分だけ助かるという行為に、こんな状況ではおかしいが嫌悪を感じてしまう。
「か、彼はやっと治療が終わったところで、絶対安静が必要なの。だから、彼のためにも会うのはもう少し先にしてもらえない?」
忍が言ったことは全て本当だ。目の前の悪魔を名乗る少女にどれほど情があるかは分からないが、話が通じないわけではないし、少年が目を覚ますまでの時間を稼ぐための必死の説得を試みる。
「あら、じゃあ尚更会いに行かないと。待っててねぇ〜ジュンゴ。今、愛しのリリムちゃんが会いに行きますよ〜?」
…………悪魔に人としての情を求めた自分が馬鹿だった。まさか、彼が回復する時間を稼ごうとしたら、まさか彼に会いに行くことに乗り気になってくるとは。
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