第二章
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またトロピカルなカクテルを飲んだ、しかしそうしたものは感じず観光客の中で日本語を聞いてだった。
話す初老のアロハシャツと膝までの半ズボンの男に声をかけた、彼を織部康友という男でサラリーマンをしていて旅行が趣味でだ。
ここにも何度か来ていた、沢田は自分のことを話すと織部に言われた。
「ああ、あのチェーン店のオーナーですか」
「はい、そうなんです。それで」
「恋愛ですか」
「それを求めてここに来たんですが」
「そうですね」
夜に一緒にバーで飲みつつだ、織部は言った。
「いいお店知ってますが」
「それはまさか」
「ええ、そのまさかで」
それでというのだ。
「観光地には付きものの」
「そうしたお店ですか」
「そうです、私は若い頃行ったきりですが」
それでもというのだ。
「今もありまして」
「そこに行けばですか」
「まあそういうことは」
「そうですか」
「よかったら」
それならとだ、沢田に話すのだった。
「行かれて下さい」
「出来れば素敵な出会いを」
沢田は飲みつつ言った。
「期待していまして」
「今もですね」
「そうなのですが」
「まあそれはです」
「今はですか」
「なくてしかも女の子といいますと」
それならとだ、織部は笑って話した。面長で日に焼けた初老であっても若々しい感じで身体も衰えが見られない。
「私が知っている限りは」
「そのお店ですか」
「他にも何軒かありますが」
「いや、そのお店紹介して下さい」
こう織部に言ってだった。
店を紹介してもらうと行った、そこは西洋風の屋敷であり中に入ると伝統的な娼館であった。だが設備は現代のもので。
沢田は黒髪に日に焼けた肌の小柄で胸の大きな娘を選んだ、そしてその娘と遊んだ。
次の日はアジア系の娘、その次は白人の娘とだ。
旅行に行っている間毎晩その店に行った、そうして日本に帰って友人にことの顛末を話してから言った。
「結局俺はな」
「ときめきやロマンスはか」
「旅行中なくてな」
それでというのだ。
「その店にだよ」
「毎晩行っていたか」
「そうだったよ」
こう話した。
「これがな」
「そうなんだな」
「海は奇麗で日差しは快適で」
旅行自体のことも話した。
「料理も酒も美味かったけれどな」
「出会いはなくてか」
「結局いつも通りだよ」
「風俗通いか」
「そうだよ、風俗好きかっていうとな」
こう聞かれると、というのだ。
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