第一章
[2]次話
秋の滝
秋が深くなり山は紅葉の葉で紅に染まる様になった、それで紅葉狩りに行く者が増えていてだった。
志士の面々も今は普段の殺伐とした仕事のことは忘れてそのうえで都から少し行った山に入って紅葉狩りを楽しんでいた、いるのは薩摩藩の面々だが。
西郷隆盛は笑ってだ、紅葉の中でこんなことを言った。
「いやあ、酒を肴にしたいでごわすな」
「吉之助さあ、それは後にしもっそ」
常に傍にいる名優の大久保利通が言ってきた。
「今はこうして」
「紅葉だけを楽しむでごわすな」
「そうしよう」
「一蔵どんの言う通りでごわすな」
西郷は大久保の言葉に笑って頷いた。
「それならでごわす」
「見ていこう」
「そうするでごわす」
西郷は口を大きく開けて笑って応えた、そうしてだった。
二人は他の薩摩の志士達を共に紅葉狩りを楽しんでいった、そうして山の奥に奥にと進んでいくがここで。
ふとだ、護衛の中村半次郎が腰の方なの鍔に指を当てて言った。
「西郷どん、大久保どん」
「どうしたでごわすか」
「何かいるでごわす」
「ははは、新選組でごわすか」
西郷は笑って応えた。
「まさか」
「そのまさかかも知れんとよ」
「いや、山の中とよ」
大久保は鋭い目で言った。
「熊か」
「熊でごわすか」
「そうでなかとよ」
「熊ならでごわす」
西郷は大久保の話を聞いて述べた。
「これだけ大勢でいればでごわす」
「安心でごわすか」
「そうでごわす」
こう大久保に言うのだった。
「全く」
「獣は大勢なら襲って来ない」
「そうでごわす」
だからだというのだ。
「かえって安心でごわす」
「新選組よりも」
「そうでごわす、しかし」
西郷はまた笑って言った。
「若し新選組なら」
「都からご苦労だというでごわすか」
「そうでごわす」
大久保に告げた。
「全く以て」
「吉之助さあは最近命を狙われているでごわす」
その新選組にとだ、大久保は言った。
[2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ