第二章
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「本当に大変なのか」
「そうだよね」
「忍ちゃんもそう思うわよね」
「そんなに大変なのかしら」
「車椅子に乗ることが」
麻衣子の受け持ちの生徒達は誰もがこう言った、兎角だった。
どの生徒も大変とは思わなかった、だが麻衣子はそんな生徒達を見ても乗ってみたらわかるわと言うだけだった。
そして実際に乗ってみるとだった。
「えっ、道のでこぼこで躓いたり」
「階段上り下り出来ないし」
「足元や膝にすぐに何か当たりそうになるし」
「速く動けないし」
「人にもぶつかりそうになって」
「思った様に動けなくて」
「大変よね」
麻衣子は戸惑う生徒達に優しく話した。
「これがね」
「車椅子なんですね」
「車椅子に乗ることなんですね」
「そうなんですね」
「そうなの、本当にね」
まさにというのだ。
「物凄く大変なの。先生がお世話になったのは少しの間でも」
「こんなに大変だったんですね」
「けれど足が悪い人はこの車椅子がないとですね」
「動けないんですね」
「そうなんですね」
「そうなの、世の中色々な人がいてね」
そうであってというのだ。
「それでなのよ」
「車椅子にずっと乗っている人がいるんですね」
「そうでないと動けない人がいるんですね」
「そうなんですね」
「そうなの」
まさにというのだ。
「そのことをわかってね」
「わかりました」
「車椅子の人、障碍者の人達のことを考えます」
「これからは」
「そうします」
「こんなに大変なことなんて」
特にだ、忍は思い知った様に言った。
「思いませんでした、これからはです」
「障碍者の人達のことを考えてね」
「何でもやっていきます」
「誰でもね」
「そうしていきます」
「お願いね、そうしていったら助かる人が一杯いるから」
麻衣子は忍に優しい笑顔で話した。
「そうしていってね」
「はい、絶対に」
忍は約束した、麻衣子に対してだけでなく足の悪い人達に社会そして自分自身に。そうしてだった。
障碍者の人達のことをいつも考える様になり成長するとバイアフリー関連の仕事に就職した、そうして多くの障碍者の人達の為に働いた。そのことを同窓会の場で麻衣子に言うと彼女はこれ以上はないまでの笑顔でよかったわ、と言ったのだった。
車椅子 完
2024・10・13
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