影の男
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届けながら死ぬがいい」
そう言うと彼の幻影は姿を消していった。
「バダン怪人軍団・・・・・・。ゼクロスだけでなくそんな連中までいるのか」
カメレオロイドの幻影が消え去った後本郷は呟いた。
「猛さん、それよりも」
ルリ子が不安げな眼をする。
「ああ、解かっている。平和公園とグラバー園の爆弾だ、すぐに行こう」
「ええ」
二人はすぐさま礼拝堂を後にした。それを礼拝堂の上から見送る一つの影。
「フフフ、見事に動いてくれるな」
黒い服を着た神父、カメレオロイドであった。
「焦り、もがくがいい。そして気を乱すのだ」
笑っていた。自分より下等な生物を愚弄する笑いだった。
「私を楽しませてくれ。そうでなければ面白くはない」
カメレオロイドはそう言うと姿を消した。礼拝堂の下ほホテルの前では本郷とルリ子がバイクに乗り出発していた。
長崎平和公園は原爆投下の中心地とその北側に平和を祈願して造られた公園である。その中央には有名なブロンズ像がある。高く掲げられた右手は上から落ちて来た原爆の怖ろしさを、そして水平に伸ばされた左手は平和を示し、原爆の犠牲となった人々の冥福を祈る姿を取っている。その他にも公園内には水を求めてさまよった少女の手記が刻まれた平和の泉や世界各国から贈られた平和の像が立ち並んでいる。
爆心地のすぐ下には教会があった。だが原爆によりその全てが破壊された。同じ神を信じている筈の者達に。それが戦争なのである。これは歴史の皮肉である。その教会を建てた者も壊した者も同じ神を信ずる者達であったのだ。だが一つの奇蹟が起こった。
跡形もなく吹き飛ばされた教会だったが一つだけ残ったものがあった。鐘である。神を祝福する鐘である。それだけが無傷で残った。それを見た人々は涙した。全てが焼き尽くされ何も無くなった長崎に希望が残ったのである。
「その希望すらも、平和への気持ちすらも踏み躙るバダン・・・・・・、許せん!」
本郷はマシンに乗りながら憤っていた。その顔には怒りの色が浮かんでいる。人の幸福を、平和を、希望を踏み躙る悪に対する怒りの色である。
平和公園に着いた。もう昼過ぎである。見れば何処もおかしなところはない。そこらで座りジュースを飲み談笑している人達がいる。皆平和に満ち足りた笑顔をしている。
(この笑顔の為にも・・・・・・)
本郷は進んだ。何処にあるのかまだ判らない。だが絶対に見つけるつもりだ。
「ここにはないか」
平和記念像の辺りを調べたが無かった。ラグビー場やプールにも無かった。
「ここにもないか」
ふと浦上川の方を見る。子供達が楽しそうに釣りをしている。
その後ろには陸上競技場がある。今日は誰も使用していないらしく静まり返っている。
「誰もいないのか。静かなものだ
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