影の男
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諦めていた。長きに渡った弾圧である。流石にもう信者はのこっていないであろう。だがすぐに彼はその考えが早過ぎた事を知った。
まずイザベルナゆりという女性をはじめ数人男女が来た。そしてそれから次々と世を忍び信仰を続けていた切支丹達がやって来た。奇蹟だった。神父はその奇蹟に心を打たれた。何とこの長崎だけでも数万もの切支丹達が信仰を続けていたのだ。
聖堂の中は美しいステンドガラスがある。そして夜になると光で彩られる。『日本の聖母像』と呼ばれる神々しい聖母像もある。国宝にも指定されている歴史的にも文化的にも重要な建物である。
「ここで見たという人がいると聞いたが」
本郷が天主堂へ向かう階段を登りながら言った。
「この天主堂で・・・。何か妙な話ね」
ルリ子がその言葉に合わせるように言った。
「確かに。現代の魔物と言ってもいい彼等が教会に姿を現わすとは。いや、あながち間違いではないか」
かっての教会の腐敗をそこに含んでいた。教会の腐敗と暴走は欧州の歴史において重要な位置を占めている。それが為に多くの血も流れている。
天主堂の前に着いた。左手にはローマ法王ヨハネ=パウロ二世の胸像がある。
ここまで来て彼等は妙な事に気付いた。普段は平日でも多くの観光客が訪れるこの天主堂だが今ここにいるのは彼等二人だけなのである。
「・・・・・・おかしいと思わないか、ルリ子さん」
本郷は辺りの気配を探りながら言った。
「・・・・・・ええ、確かに」
ルリ子も何かを察した様である。気を張った。そして聖堂へ入っていった。
聖堂の中は少し薄暗かった。ステンドガラスから差し込める光がその中を照らしている。
中にはやはり二人以外誰もいない。二人は身長に前へ進んでいく。
中央まで来た時だった。急に後ろの扉が閉まった。
「ムゥッ!?」
本郷がルリ子を庇う様に身構えた。その周りを幾つかの影が取り囲んだ。戦闘員達だ。
「フッフッフ、よく来たな、本郷猛よ」
礼拝堂も方から声がした。
「バダンかっ!」
「フフフ、如何にも」
その声と共に影が礼拝堂の前に現われた。それはすぐに人の姿になった。赤い髪と緑の眼を持つ若い男である。黒い神父の服を着ている。その胸には何かが架けられている。
だがそれは神父が架けるべきロザリオではなかった。悪魔を現わす逆十字であった。
「貴様は・・・・・・」
「バダン怪人軍団の一人、アンリ=ド=フォンテーヌ。またの名をカメレオロイドという」
逆十字の男は落ち着き払った声で答えた。
「バダン怪人軍団・・・・・・。そんなものまであるのか」
「そうだ。我がバダンの真の選ばれし者達だ。以後覚えていてもらおう」
男は前に進みながら言った。
「もっともそれは天界での話だがな」
ア
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