第二章
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「ロマンもね」
「わかっている人だったわね」
「そしてね」
哲義はパエリアのご飯を中に入っている貝と一緒に食べつつ言った。
「李白さんもね」
「唐代の」
「そう、あの人も月を見て」
「詩を詠んでるわね」
「漱石さんはお酒は飲まなかったけれど」
「李白さんは有名ね」
「よく飲んで」
酒を愛したことで知られている。
「それでね」
「詩を詠っていたわね」
「あの人はね。文学もね」
これもというのだ。
「感じるね」
「こうして月を見ていると」
「そうして飲んでいるとね」
「ロマンがあるわね」
「そうだね、世の中色々あるけれど」
それでもというのだ。
「こうして時々でもね」
「ロマンを感じることね」
「ロマンも必要だよ」
哲義は笑って言った。
「世の中、人間にはね」
「それで今夜は月が奇麗だから」
「そして二人一緒にいるからね」
「こうして飲んでもいいのね」
「そうだよ、そしてね」
それでというのだった。
「さっき二人で乾杯したけれど」
「飲んで食べる前にね」
「けれどね」
「また乾杯するの」
「今度は月にね」
今二人で見ているそれにというのだ、見れば今宵の月は三日月で白銀に輝くミステリアスな雰囲気に満ちている。
「乾杯しよう」
「このロマンをくれる月に」
「僕達にね。どうかな」
「いいわね」
香緒里は笑顔で頷いた。
「それじゃあね」
「乾杯しようか」
「そうしましょう」
香緒里は自分からグラスを出した、そしてだった。
二人で乾杯した、高々と月に向けてそうした。そのうえで共にワインを飲んだ。そうしてから見た月はというと。
「やっぱりね」
「ロマンチックよね」
「いつも夜空にあるけれど」
「今はとてもそう感じるわね」
「そんな時もあるね」
「そうよね」
二人でこんな話をした、そうしてさらに飲んで食べていくのだった。
月に乾杯 完
2024・12・12
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