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月に乾杯
第一章

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                月に乾杯
 月が奇麗な夜だった、それでサラリーマンの北崎哲義は一緒にいる交際相手の吉田香緒里に言った。哲義は奇麗な岐路紙をお洒落にセットしていて面長で涼し気な顔立ちだ。背は一七八位ですらりとしておりスーツが似合っている。香緒里は黒髪をショートボブにしていて楚々とした大人しそうな顔立ちでスタイルがよく背は一六二位で膝より少し丈が上のタイトスカートのスーツである。
「これから何処に行く?」
「家じゃないんですか?」
 香緒里は同居しているマンションの部屋だと返した。
「行くんじゃなくて帰るんですよね」
「いや、月が奇麗だから」
「告白はもう受けましたよ」
 香緒里は今度は笑って返した。
「ですからこうして」
「ああ、月が奇麗は」
「アイラブユーですよね」
「夏目漱石さんだね」
「はい、ですから」
「いや、二度目のそれでもあって」
 哲義もその意味を否定しなかった、そのうえで夜の街をさらに歩きつつ話した。
「月を見ながら何処かで楽しもうか」
「何処かで」
「いいお店で」
「それならです」
 香緒里は哲義の言葉を受けて言った。
「いいお店があります」
「そこは何処かな」
「ここから少し行ったスペインバルのお店で」
 そこでというのだ。
「そこに行けば外の席もありまして」
「月を見ながらなんだ」
「飲んで食べられますよ」
「それじゃあ」
 その話を受けてだ、哲義は香緒里に言った。
「そこにしようか」
「そうしますか」
「うん、そして」
「外の席に二人で座って」
「月を見ながら」
 そうしてというのだ。
「飲んで食べようか」
「晩ご飯にもして」
 まだ帰路についたばかりでいつも夕食の食材を買うスーパーにも寄っていなかった。
尚二人は働いている会社は違うが同じテナントで働いていて知り合っている。
「楽しもう」
「それでは」 
 香緒里も笑顔で応えた、そうしてだった。
 香緒里が哲義を案内してそのうえでそのスペインバルに入った、店員に屋外の席がいいとも話してだった。
 実際に二人で席に向かい合ってだ、ワインもパエリアも他のつまみになるものも注文してであった。
 飲んで食べはじめた、そして。
 赤ワインを飲んでだ。哲義は香緒里に言った。
「いや、月を見ながらね」
「こうして飲んで食べると」
「冬だからもう寒いけれど」 
 二人共コートを着たまま飲んで食べている、そのうえで言うのだ。
「いいね」
「ロマンチックよね」
「そうだね、漱石さんもね」
「ロマンチストだったのね」
「結構癇癪持ちでおっちょこちょいなところもあって」
「困ったことにDV気質でね」
「被害妄想でもあったけれど」 
 それでもというのだ。
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