第三章
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「それはだ」
「大儀名分が欲しかったからだ」
コインブラは強い声で指摘した。
「だからだ」
「ナチス、ファシズムを裁くな」
「その大義が欲しかった」
「ナチスは一般法で裁けた」
俗にある殺人罪等でというのだ。
「それが可能だった、だがそれでは大儀が弱い」
「ナチスという悪を裁くには」
「だから敢えて出した」
人道に関する罪等をというのだ。
「そうした」
「政治的な理由だな」
「それでそうした、そしてだ」
「ナチスを裁いた」
「日本もな」
この国もというのだ。
「しかも日本の場合は戦争犯罪だ」
「ナチスの国家の非道でなくな」
「どの国も戦争をしていれば起こり得る」
「そんなものだった」
「だからだ」
そうしたものだからだというのだ。
「何かと無理があった、それが極東軍事裁判だった」
「そうだな」
二人で話した、そしてだった。
バーグレーはコーヒーを一口飲んだ、そのうえでコインブラに対してあらためて強い声でこう言った。
「どちらの裁判も被告人は全員無罪だ」
「事後立法だからな」
「それが法的な結論だ」
それになるというのだ。
「間違いなくな」
「そうだな」
「しかしだ」
それでもというのだった。
「これは法的なことであってだ」
「政治的にはな」
「少なくとも今の国連は二次大戦の勝利からはじまっている」
「連合国の勝利だ」
「国連が世界の秩序だ」
これを形成しているというのだ。
「まさに」
「その秩序を破壊するか」
「少なくとも連合国はしない」
「我が国も含めてな」
「そうだ、だからそれはない」
「二つの裁判が否定されることはな」
「国連がある間はな、だが言うことは出来る」
バーグレーは冷静な口調で述べた。
「法律家としてな」
「極東軍事裁判もニュルンベルグ裁判も間違っている」
「どちらもな、それは言える」
「事後立法だとな」
「それは言おう」
「法律家としてな」
「間違っていることは事実だからな」
コインブラに言った、そして二人は主張していった。それで国連が揺らぎ裁判の結果が覆ることはなかった、だが。
それでも彼等は主張しそれを認める人達もいた、二人は認めてくれる人達がいてくれることに喜んだがそれで満足しなかった。正しいと思うからこそ主張していったのだった。法律家として。
軍事裁判 完
2024・12・15
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