第二章
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「確実にな」
「法治国家じゃなくなるか」
「そうなるんだよ」
こう話した。
「その時点でな」
「だからやったら駄目でか」
「極東軍事裁判もな」
「アウトでか」
「その元になったニュルンベルグ裁判もだよ」
こちらもというのだ。
「アウトなんだよ」
「しかしナチスは裁かないと駄目だっただろ」
バーグレーはコインブラに真顔で言った。
「絶対にな」
「あそこまでしたからだな」
「ああ、アウシュヴィッツとかな」
「そうだけれどな」
「事後立法はやったら駄目だったか」
「そうだよ」
「じゃあどうすればよかったんだ、それに」
バーグレーは考える顔になって述べた。
「極東軍事裁判が間違いならあの裁判で死刑になった人達はどうなるんだ」
「死んだのにか」
「そうなったけれどな」
「どうなるだろうな」
コインブラもこのことには答えられず首を捻った。
「一体」
「死んだけれどな」
「どうなるだろうな」
「ああ、あの裁判が間違いならな」
バーグレーはこの裁判そしてニュルンベルグ裁判について考える様になった、そして大学は法科に進んだ。コインブラも大学は違うがそちらに進んだ。
二人は共に法律を学んでいった、やがてバーグレーは法学博士、ある大学の教授となりコインブラは弁護士となった。そのうえでだ。
バーグレーが教授を務める大学に仕事に来たコインブラにだ、彼は自身の研究室で共にコーヒーを飲みつつ話した。
「ハイスクールの時を覚えているか?」
「あの時か」
「極東軍事裁判について話したな」
「ああ、覚えてるよ」
コインブラは確かな声で答えた。
「あの時のことは」
「そうか」
「ああ、あの裁判はな」
「事後立法だな」
「間違いなくな」
「そうとしか言えないな」
「法的にな」
こう言い切った。
「法律の専門家として僕は断言する」
「僕もだ」
バーグレーもその通りだと答えた。
「まさにな」
「それが法律家の結論だな」
「何しろそれまでその法律がなかった」
「人道に関する罪等が」
「だから当時も反対意見があった」
このことをだ、バーグレーは指摘した。
「アメリカの連邦議員からもな」
「間違っていると」
「その通りだ、ニュルンベルグ裁判からだ」
「問題があった」
「だから厳密に言うと」
そうすると、というのだ。
「二つの裁判で捌かれた被告達は無罪だ」
「紛れもなく」
「しかし何故敢えて事後立法を行ったか」
そのことも言った。
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