第五章
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「四位だったわ」
「クライマックスも出られなかったな」
「そうだったし昔はね」
カープはというのだ。
「調子いいのは鯉のぼりが登るまで」
「本当に春だけだな」
「鯉だけにね」
千佳はこうも言った。
「その鯉が登るまでよ」
「子供の日までか」
「カープが強いのはね」
「そう言われてたんだな」
「それが優勝する様になって」
昭和五十年初優勝である、この年におぞましき邪悪の権化である読売ジャイアンツは無様に最下位になっている。
「変わってきたけれど」
「それでも去年はな」
「無残だったわ」
千佳は自分からこう言った。
「本当にね」
「自分で言ったな」
「言うわよ、しかしね」
「それでもか」
「あれは本当に例外で」
そうであってというのだ。
「今年はよ」
「優勝するんだな」
「そうよ、そして」
そうなりというのだ。
「日本一よ」
「九月も勝つんだな」
「阪神も破ってね」
そうもしてというのだ。
「覚悟しなさいね」
「阪神出すか」
「地獄のロードを勝ち抜いた」
そうしたというのだ。
「阪神を叩きのめしてやるから」
「ああ、返り討ちにするよ」
兄は当然負けていなかった。
「覚悟しろ」
「そう言うわね」
「わかってるだろ」
「お兄ちゃんはね、だからよ」
「今年はか」
「九月だってね」
問題のこの月もというのだ。
「勝つわよ、当然巨人優勝なんて」
「考えたくもないな」
「あそこは最下位でいいのよ」
心底願った。
「もうね」
「そうだよな」
兄もこのことには完全に同意だった。
「あそこがなればいいんだよ」
「毎年優勝とか言うけれど」
「毎年最下位でいいよ」
「何なら次のビッグバンまでね」
その時までというのだ。
「最下位でいいわ」
「全くだよ、それで優勝は」
「カープでね」
「阪神でな」
お互いに言い合った。
「決まりだよ」
「春先で終わらないわよ」
「五月も六月も勝って」
「七月も八月もで」
「そして九月も」
千佳が言われたこの月もというのだ。
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