第一章
[2]次話
四月はよくても
根室寿と千佳の兄妹はその朝極めて上機嫌であった、中学生の兄は小学生の妹に朝食のご飯を食べつつ笑顔で言った。
「今日も朝ご飯が美味しいな」
「そうね」
千佳も食べつつ頷く。
「納豆ご飯最高よ」
「メザシもお味噌汁も」
「お漬けものも海苔も」
「梅干しだって」
「いや、朝から美味しい思いして」
「幸せだよ」
寿はさらに言った。
「阪神が勝って」
「カープもね」
「今首位だぞ阪神」
「カープすぐにひっくり返すわよ」
「このままいって欲しいな」
寿は心から言った。
「阪神は」
「いや、カープがね」
千佳はすぐに突っ込みを入れた。
「すぐによ」
「巻き返すっていうんだな」
「そしてね」
「そのまま首位でか」
「優勝よ、そして」
千佳はさらに言った。
「クライマックスも勝って」
「シリーズもか」
「勝ってね」
そうしてというのだ。
「日本一よ」
「そうなるっていうんだな」
「四十一年振りにね」
「それ言ったら阪神は二年振りにだよ」
兄は負けじと言い返した。
「日本一だよ」
「たった二年じゃない」
「その前に三十八年ブランクあっただろ」
「こっちはもう四十一年よ」
「たった三年の差だろ」
「二年より多いでしょ」
納豆ご飯を食べつつ反論する、糸が引いている。
「そう考えたらね」
「カープの方が上か」
「そうよ。けれど言うのね」
「阪神だよ」
今年日本一になるのはというのだ。
「絶対に」
「カープに決まってるでしょ」
二人共言い合うが笑顔のままである、そしてだった。
二人はそれぞれ登校した、寿は部活の朝練の後はクラスでクラスメイト達と話した、最初は世間話だったが何時しか阪神の話題になり。
満面の笑顔でだ、こう言った。
「このまま優勝だよ」
「そうなればいいけれどな」
「まだ四月だからな」
「何とも言えないな」
「はじまったばかりだからな」
だがクラスメイト達は皆微妙な顔で応えた。
「優勝して欲しくても」
「今ははっきり言えないだろ」
「まだな」
「これといって」
「いやいや、しっかりとした戦力はあって」
寿はそれでとだ、強い声で語った。
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