第二章
[8]前話
「色々聞くな」
「日本で魔王っていうと」
キリスト教では悪魔達の君主を指す、有名な魔道書グリモワールでは七十二の彼等が書かれている。
「人間がなるものよ」
「人間が怨霊になってな」
「そうよ、怨みでね」
この感情を抱いてというのだ。
「憎しみに心を支配されて」
「心が人間じゃなくなるな」
「そして身体から出て」
その心即ち魂がというのだ。
「そうなってよ」
「怨霊になってな」
「それが並の怨霊以上になったら」
「魔王になるな」
「それが日本の魔王で」
そうであってというのだ。
「あんたの言う通りにね」
「この世でだよな」
「一番ね」
こう言っていいまでにというのだ。
「恐ろしい存在になるのよ」
「そうだよな」
「けれどね」
百合子はそれでもと話した。
「そこまでなる幽霊はね」
「流石に滅多にいないな」
「ごろごろいたら日本滅んでるわよ」
真顔での言葉だった。
「もうね」
「そうなるよな」
「いないからね」
滅多にというのだ。
「それでよ」
「ふわりが幽霊見てもな」
「特にね」
「気にしなくていいか」
「そうよ」
こう息子に話した。
「安心しなさいね」
「それじゃあな」
洋介はそれならと頷いた。
「いいけれどな」
「殆どは普通の人や生きものと同じよ」
「霊は」
「身体がないだけよ」
「本当にそれだけだな」
「後は何も変わらないわ」
息子に言うことは変わらなかった、そしてだった。
洋介はふたりにだ、こう言った。
「ふわり、遊ぶか?」
「クゥ?」
そう言われてだ、ふわりは洋介に顔を向けた。洋介はその彼にゴムのボールを出して楽しそうに笑って言った。
「取って来い」
「ワンワン」
ふわりは投げたボールに向かって走り咥えた、そのうえで彼のところに戻ってボールを手渡した。その彼女を見て洋介は百合子に言った。
「幽霊よりもボールの方が大事か」
「そうした幽霊だったのよ」
「本当に虫か何かの幽霊か」
「そうだったみたいね」
「じゃあ何でもないな」
「お母さんの言った通りでしょ」
「ああ」
母の言葉に頷いた、そうしてだった。
ふわりにまたボールを投げた、するとふわりはまたボールを追いかけて咥えた、もう幽霊は見ていなかった。
幽霊が見える 完
2025・4・23
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ