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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
渾身の一作と卒業の時 A
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。あ、初めまして。ウチ、広田レオナっていいますー。大阪(おおさか)出身で、愛美ちゃんと一緒の文学部に進むんですよー。なっ、愛美ちゃん?」

「うん。専攻は違うけどね。わたしは海外文学で、レオナちゃんは日本文学とか詩作の方」

 愛美は文学部に進むことは決めていたけれど、どうせなら大好きな『あしながおじさん』の作品世界について深く掘り下げて学んでみようと思い、海外文学を専攻することにしたのだ。

「そうなんだ。初めまして、レオナちゃん。俺はそこにいる珠莉の叔父で、辺唐院純也です。大学でも愛美ちゃんや珠莉たちと仲良くしてやってね」

「はい、任しといて下さい! っていうか純也さんって、愛美ちゃんの保護者みたいやねー」

「……うん、まあ……そんな感じ」

 彼女は愛美が純也さんと交際していることを知らないため、愛美は苦し紛れのごまかし方をするしかなかった。

「――はい、ほな撮りま〜す! いちたすいちは〜?」

「「「「に〜!」」」」

 ……カシャッ。

 中央に愛美と純也さん、その両端にさやかと珠莉が立ち、レオナがカメラモードにしたスマホのシャッターを切った。レオナは写真を撮るのも上手いので、カメラマンを目指してもよかったんじゃないかと愛美は思う。


「――純也さん、レオナちゃんが撮ってくれた写真、メッセージアプリで送るね」

 愛美は校門のところまで、純也さんを見送りに行くことにした。

「ありがとう。――じゃあ。俺はそろそろ東京に帰らないと。愛美ちゃん、また連絡するよ」

「うん、待ってる。今日はホントにありがと。……あと」

「ん?」

「今日までわたしの保護者でいてくれて、ありがとうございました」

「うん、…………えっ!?」

 愛美が改まって頭を下げると、その意味を理解したのかしていないのか、純也さんはうろたえた。さすがにこれは彼にとって、予想外の一撃だったらしい。

「ううん、何でもない。じゃあ、またね」

「…………うん。じゃあ、また」 

 彼の背中が見えなくなるまで見送ると、愛美は「あれじゃ、ちょっとヒントあげすぎだったかな」と肩をすくめた。

(まだ完全には気づいてほしくないけど、少し匂わせるくらいなら……いいよね)

 
 ――こうして、たった一人で始まった愛美の高校生活は終わりを告げたのだった。大切な友人たちや恋人に囲まれて。
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