白き極光編
序章
ウェルカム・トゥ・デザートキングダム
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「スノーモービルというのは、本来砂漠を走る物ではないのだがな」
愚痴を溢すかのように呟くは白装束ニンジャのコールドホワイト。
砂漠の海を愛用スノーモービルで進みながら、ザイルで繋がれたトロッコに乗る2人をチラリと見やる。
「フィガロは機械技術に優れる国だ。到着したら整備も修理も頼めるはずさ」
額に青いバンダナを巻いた自称トレジャーハンターのロックはトロッコの縁に右腕を乗せ、コールドホワイトを宥めるように道案内をする。
もう1人の乗客、魔導の少女ティナは、記憶の無い不安からか俯いたまま座り込んでいる。
ウェーブがかかり、後ろに纏められた長いブロンドの髪が、前から吹き抜ける風に流される。
「フィガロ王国…表向き帝国と同盟を結びつつ、裏では反帝国レジスタンスと繋がっている国、か。とんだ二枚舌だな」
「フィガロは帝国に比べて国力、軍事力では劣っている。生き残りの為には舌を2枚でも3枚でも使わなきゃならないんだ。それに、堂々と自分のとこと同盟を公言してる国こそがレジスタンスの後援組織とは、帝国だって思わないだろう」
「ミヤモト・マサシ曰く、“非常に明るいボンボリの真ん前はかえって見にくい”か」
ロックにはその言葉の意味はよく分からなかったが、恐らく目立たないと言いたかったのだろう。
まだ信用するまでには至っていないが、話している内に軽口をぶつける程度には打ち解けた気がしている。
そして、彼が別世界の存在であるという事実が、言葉の端々から実感出来るようになった。
その時! 砂中から黒い物体が飛び出した!
カブトガニめいた独特の甲殻を持つモンスター、デザートソーサー!
接近するモービルの振動を感知し、獲物へ鋭いトゲ状の尻尾を向けて落下して来た!
「イヤーッ!」
動じる事無くスリケン投擲!
絶妙な角度で撃ち込まれたスリケンで弾かれ、尻尾の切先が逸れた。
空中でクルクルと回転を加えられたデザートソーサーはそのまま落下し、コールドホワイトの左手で尻尾を掴まれる。
そして、脆弱な腹側へニンジャ腕力のパンチをうけ死亡!
「そいつの殻は加工すれば防具の良い素材になる。それなりの値で買い取って貰えるぞ」
この世界ではモンスターの身体の様々な部位が金になる。
武器や防具の素材に、食材に、薬品に。
故に、木っ端微塵にするよりは急所への一撃で即死させた方が得である。
コールドホワイトは麻袋にデザートソーサーの死体を放り込み、何事も無かったかのように走り続けた。
「あれか」
前方の砂丘の頂から、徐々に黒い城塞がその姿を現す。
「砂漠の機械国家フィガロ王国の王城、フィガロ城」
南北に長い中央塔と、そこから渡り廊下で繋がれた東西の支塔。
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