第三部 1979年
新元素争奪戦
極東特別軍事演習 その4
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来、対ソ静謐である。
ソ連との間に波風を立てずに、穏便に物事を済ませようとする方針だった。
つまりは、事なかれ主義そのものだった。
だが、同盟国である米国の態度は違った。
これまで一切不明だったソ連の新型戦術機の解析が徹底的にできると、狂喜乱舞するほどであった。
米国にとって、最高の軍事機密を手に入れる絶好のチャンスであると考えたのだ。
筆頭老中がそうまとめたところで、御剣は何の気無しに最奥にある席の方へと視線を向けた。
そこいる将軍は、先程までの余所行きの笑みも消え、何やら不安げな表情を浮かべて座っている。
25歳の若い君主にとって、米国との交渉は荷が勝ちすぎるのではないか。
将軍は、重い口を開く。
「相分かった」
そして、頷いたあと、続けた。
「米国からの秘密連絡の件は知らなかったので、国防省からの報告に改めて目を通すことはなかった。
誤りであった」
それを受けて、御剣が首相に問いただした。
「政府としての意見は、どうだね」
それまで黙っていた首相が口を開いた。
「米国の姿勢が、いつ変わるかわかりません。
今回の提案を受けれましょう」
首相は言葉を切ると、タバコに火をつけた。
「例の亡命希望者の件は、焦る必要はありますまい。
おそらく米国が引き取ってくれるでしょうし……」
御剣は首相の意見に頷いた。
「うむ、焦りは禁物だ」
政府部内の焦りには、理由があった。
つい先年起きたイスラエル空軍によるウガンダのエンテベ空港で発生した人質解放作戦の再来を恐れたからである。
イリューシン76による空挺降下作戦をソ連が行うのではないかという噂が、すでに政府部内にも出始めていたのだ。
「今少し、慎重に検討しよう」
将軍が疲れたような声で言った。
御剣がそれを見て取り、その場にいるすべてのものに向かっていった。
「では、百里基地での分解調査の実施までを、日米合同の案件とする」
結局、それが政府内の妥協点となった。
だが、分解調査の実施までというのは、所詮言葉遊びに過ぎない。
函館からアントノフ124を移動し、百里まで移動するには2週間近い時間を要し、更には検査にも数日はかかる。
如何にソ連への釈明をしても、国際問題化は到底避けられない。
いっその事、米国を巻き込んで、国際的なセンセーションを起こすべきであるというのが将軍の考えであった。
帝国陸軍参謀本部第二部長を務める少将は、乗組員の身分を聞いて焦った。
赤軍参謀総長の身柄を北海道警函館方面本部が確保し、湯の川グランドホテルで事情聴取しているとの報告を聞いて、即座に東京に身を移すことを手配した。
北海道に置けば、在留するソ連人船員や工作員によって暗殺されてしまう。
即座に、彼の部下
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