第三部 1979年
新元素争奪戦
極東特別軍事演習 その3
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ことを仰らずに……」
老人は古い型の四角い眼鏡をはずし、レンズの汚れをふき取っている。
「じゃあ、軍事演習が終わったと同時に隠居なさい。
どうせあの黄色猿に君たちは勝てぬのだから……」
老人は明らかに不快の色を示した。
眼鏡をかけ直すと、話にはならんと部屋を後にした。
チェルネンコが、老人の提案の諾否を迷ったのには理由があった。
それは、KGBのアルファ部隊による邸宅の取り囲みが行われたためである。
頼りにするソ連赤軍が軍事演習で出払ったのを見計らった、軍勢の取り囲みによる辞任要求。
日本風に言えば、この御所巻きを受けて、スースロフは早くも辞任を認めた。
ウスチノフとグロムイコは最後まで抵抗したが、威嚇射撃の後、しぶしぶ受け入れた。
何事をするにもスースロフのお伺いを立てる事。
この秘密協定は、彼自身の提案であり、それによって6人の政治局員による秘密の集団指導体制が出来た。
彼は今回の事件を受けて、胸に込み上げてくる屈辱感で、しばらく口もきけないほどであった。
だが一人黙って煮えたぎる怒りをかみしめている内に、生き延びたいという事実にぶち当たった。
「では、私も彼らの道に行くべきだろうか」
チェルネンコはそう決めると、何か気が進まないような感じがした。
「おい、どうするんだ。
辞めるか、辞めないのか」
ヘイダル・アリエフが、焦れて来た。
いつの間にか、サマースーツからKGB将官用の夏季勤務服に着替えていた。
「この分だと、今辞任をすれば、身の安全は保障するそうだ」
チェルネンコは破れかぶれの気持ちで、叫ぶように言った。
「じゃあ、辞めよう。
私も、長生きしたいからな」
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