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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百五話 瓦解の一歩
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宇宙暦796年7月23日01:00
アムリッツァ宙域、カイタル、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、第九艦隊ヘクトル、
ヤマト・ウィンチェスター

 「ヤン提督、もうしばらくきついとは思いますが、宜しくお願いします」

“なるべく早く戻ってきて貰いたいね、まあこれは冗談だが…武運を祈ってるよ”

「そのつもりです。では」

少しやつれてたな…だけど、この戦いでヤンさんは犠牲と引き換えに重要なものを手に入れた。ヤンさんと、その下で動いていた艦隊との連携だ。
 ひどい言い方になるけど、実際に戦ってみないと分からない事がある。じゃあ艦隊の訓練は何の為にやってるんだ、って話だけども…戦闘中困る事がない様にしつこく訓練をするんだが、その訓練内容というのは実戦とは程遠い。装甲服着用の白兵訓練や単座戦闘艇(スパルタニアン)の戦闘訓練はまた別だけど、実戦に近い内容にしてしまうと評価基準を統一出来ない上に、安全が確立出来ないからだ。安全な訓練をやって意味があるのか、という意見も少なからずある。でも安全基準があるからこそ艦隊の余力も分かるし、無理がどのくらい利くのかという事が分かるのだ。

 それに、安全じゃない訓練など誰もやりたがらない。そんな訓練を立案するヤツはアホの極致と言わざるを得ない。訓練で怪我や死亡したら意味は無いし、戦地に送る前に戦力減少になるのだから、組織にとって悪夢としかいいようがない。戦争をしているから、軍隊だからといって何でも許容される訳ではないのだ。
 だけどその一方で実際の戦闘は何が起こるか分からない。相手が、敵が居るからだ。訓練と違って実際の戦闘では、良いと思った事は何でも許容される。後から見ればこりゃ無理だろうといった事も平気で行われる。戦っているのは自分だけではないからだ。味方を援ける事が結果として自分も楽を出来るし、トータルとしての損害を減らす事につながる。連携という見えない要素が出て来るのはここだ。同じメンバー、指揮官同士で共に戦闘を行えば行うほど、その人がどういう指示や動きをする、又はしがちなのかという事が判る様になるのだ。

 要するにクセなのだけど、これはシミュレーションや訓練では中々見えてこない。シミュレーションや訓練には評価やレギュレーションがつきまとうから上に状況や数値が単純化されているから、ほとんどの人間が似たような傾向になる。シミュレーションではやるけれども実戦ではやらない…なんて事もある。逆もまた然りで、実際の戦場に立たないと見えない事の方が多いのだ。用兵家なんてロクなもんじゃない、というヤンさんの言葉はここに集約されている。それだけ敵も味方も殺しているというからだ。

 「全艦隊、ハーン宙域に向けて発進。参謀長、先行の第四艦隊に命令、改めて警戒を厳とせよ。前路哨戒を厳しく実施せよ」
「はっ
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