激闘編
第百五話 瓦解の一歩
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特に精神面で…距離を取っての睨み合いであるから、直ぐに戦闘状態に入る事はないものの、敵から目を離す事が出来ない。適度に気を抜きながら緊張を維持する、という矛盾する態勢を維持しなければならないのだ。
しばしの静寂を破ったのは、入電を報せる第一艦橋からのコール音だった。対応したムライが厳しい顔をしている。
「哨戒中の第十三艦隊より通報です…帝国軍と思われる哨戒部隊との触接あり。哨戒部隊の後方に一個艦隊規模の兵力を確認、通信傍受によりミッターマイヤー艦隊と判明…以上です」
「了解した。中佐、第十三艦隊に通達。敵本隊が近付いてくる様なら距離をとって無理な戦闘は避ける様にと。状況によっては後退も許可する」
ムライ中佐は一瞬何か言いたげな顔をしたが、敬礼して通信オペレータと連絡を取り始めた。
「ヤン、これは示威行動かな、手を出すなっていう…それにしてもミッターマイヤー艦隊はどこから兵力を持ってきたんだ?報告の通りに一個艦隊規模となると一万隻を越える。受けた損害をほとんど回復した事になるぞ」
ムライ中佐程ではないが、そう言うラップの顔は深刻そのものだった。
「大規模な増援があったのなら、ミッターマイヤー艦隊だけが現れるというのは不可解だよ。おそらくミューゼル大将は麾下の艦隊の兵力の再編成を行ったんじゃないかな。自分の艦隊から兵力を派出したんだと思うよ」
「話は分かるが、麾下の三個艦隊の損害を回復するとなると、ミューゼル艦隊はすっからかんになるんじゃないのか…敵の心配をしてやるのも妙な話だが」
「そうだね。でも数が不揃いのままの四個艦隊で戦うより、一つ潰して完全編成に近い三個艦隊を揃えた方が短期的には戦力としての集中度は増加する。確かにミューゼル艦隊は戦力としては計算外になるだろう、でもその代わりに彼は指揮統率に集中出来る、自分の艦隊は気にしなくていいんだから…どうかな?」
ラップの問いに答えながら思った、これは厄介だ。これでミューゼル大将は先年のボーデンで見せた戦術能力を最大限に発揮出来る、しかも規模を拡大してだ…こちらも第七、第八艦隊の残存兵力をウチと第六艦隊に振り分けたから損害は回復しているが、それでも二個艦隊強、アッテンボローの艦隊を合わせてやっと五分かどうかというところだろう。それにこちらは敗残兵を吸収したのに対して帝国軍はそうではない。戦意、士気、連携の度合は帝国軍の方が上だろう。むしろ危険度は戦闘開始時より増しているかもしれない。
「…やる気のある敵というのは困ったもんだな、ヤン」
22:30
銀河帝国軍、ミッターマイヤー艦隊旗艦ベイオウルフ、
ウォルフガング・ミッターマイヤー
「叛乱軍、相変わらず我々と一定の距離を保ったままです。こちらの有効射程圏内には入ろうとしません」
そう報告を上げてきたドロ
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