暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百五話 瓦解の一歩
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
る。何よりも指揮官として優秀という事だ。参謀、つまり助言者として優秀な事と、指揮官としてのそれは全く違う。指揮官に必要なのは、意思決定者として自らの判断に対し責任を負う事が出来るかどうかだ。自分の指示一つで万単位の人間が死ぬ事もある、その事実に押し潰されないだけの胆力を持たねば到底指揮官など無理だろう。シミュレーションだと出来る事が実際には実行出来ない…訓練の勇将、実戦の弱将がごまんと居る中で彼等という者達を見つける事が出来たのは、ラインハルト様にとっても私にとっても本当に幸運だった。

 「上層部の指示は増援到着まで現状維持、待機だ。一戦し、我々を抜き難い…叛乱軍にそれを示した。上層部の指示は理解出来る」
「閣下がそうお考えならば我々はそれに従います。ですが、ただ待つのでは叛乱軍に侮られるのではありますまいか」
「その通りだ…指示は指示として、ただ待つのは無聊を託つというものだ…ミッターマイヤー、何か思う所があれば申してみよ。おそらく卿と私の考えは同じ筈だ」
ラインハルト様がそう言うと、再びミッターマイヤー提督が自らの案を語り出した……閣下の艦隊から兵力を各艦隊に分派してもらい、各艦隊を再編成したのち可能な限り攻勢防御を実施する…という、かなり能動的な案だった。
「我々が活発に活動すれば、それだけ叛乱軍の注意を引きつける事が出来ます。その上で敵兵力の漸減に徹する…まあ、新たにアムリッツアからの増援が出現するかも知れませんが、その分ボーデンに回す敵兵力を吸引することが出来ます。こちらの増援の到着後は逆に叛乱軍に圧力をかける事が可能になるでしょう…閣下にはご負担を強いる事にはなりますが…」
最後は済まなさそうに意見を終えたミッターマイヤー提督だった。負担を強いるか…ラインハルト様はそれを決して厭う方ではない。
「構わない。キルヒアイス、我が艦隊の残存兵力はどれくらいだ?」
「はい…一万二百隻です」
「ふむ…では七千隻を各艦隊に振り分けるとしよう。同時に私の率いる本隊の艦艇編成を改める。本隊は高速戦艦と巡航艦で編成する…七千隻の振り分けはキルヒアイス、卿と各艦隊司令官に任せる。再編成完了は明日一二〇〇時とする」
「了解いたしました」
「よし…フェルナー」
「はい」
「卿はブラウンシュヴァイク公の許へ特使として赴いてもらう。意味は分かるな?」
「はい。陳情の形を借りた公の補佐という事で宜しいでしょうか」
「その通りだ。此方まで来る事はない、こちらの状況を説明した上で、ただ督戦して欲しいと伝えるのだ。公が動けば前線の士気は上がるとな」
「はっ」
「では各人共かかれ」




7月24日19:00
フォルゲン宙域、自由惑星同盟軍、第一艦隊旗艦ヒューベリオン
ヤン・ウェンリー

 対峙というのは心身共に疲労していく。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ