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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第百五話 瓦解の一歩
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通信オペレータの元へ向かうタナンチャイ参謀長の脇を抜けて、スールが近付いて来た。何だ?
「分艦隊司令のダグラス少将、バルクマン少将が本艦への乗艦許可を求めておられます」
「通信では…了解した、艦長、許可を出してくれ」
二人が現れたのは三十分後だった。
「何だか久しぶりな気がしますな、副司令長官閣下」
「もっと楽に話せよ、マイク…二人共、俺の部屋に行こうか。副司令と参謀長も一緒に来てくれ。フォーク、後を頼む」


01:45
タナンチャイ・タナワット

 ワイドボーン副司令をはじめとして、私以外の参謀チームは副司令長官との付き合いが長い。だから彼等は副司令長官が何を考えているか、おぼろげながらも知っている。私はと言うと…驚く事の方が多い。ブルース・アッシュビーの再来と呼ばれる閣下だが、ただの優秀な戦術家、艦隊司令官ではない。今回の作戦もそうだ、普通なら進攻経路として使わないハーン方面からの進撃…。以前に一度聞いた事がある、何故この経路を選んだのかと。
『誰も使わないじゃないですか。単なる思いつきです』
その時ははぐらかしてそう言ったと思ったのだが、ワイドボーンや参謀達、副官のローザス少佐に尋ねると、
『本当に単なる思いつきだと思いますよ』という返事が返って来る始末だ。何を考えているか分からない時があるという。

 「本当にこのままハーンに進んでいいのかという事だ。フォルゲンやボーデンでは味方が戦っているんだぞ」
「心配は要らないよ、オットー。ヤン提督なら大丈夫だ」
「その根拠を示して欲しい」
「私の勘…では駄目かい?」
「あのなあ、それで納得するなら此処まで来はしないぞ」
バルクマン少将…副司令長官の同期だ。にやけながら黙って見ているダグラス少将も同様だ。公私共に親交が深いと聞いている。その彼等が此処まで来るという事は、副司令長官は彼等にすら作戦会議レベルの情報しか与えていないという事だろう。
「参謀長はどう思われる?副司令長官はご自身の考えに自信がお有りの様だが」
私に振るな!
「…そうですな、私は閣下の方針に異存はありません。それに、この段階での作戦変更など混乱を生むだけです。違いますかな」
「それはそうだが」
ワイドボーン副司令も何も口にしない。おそらく彼も聞かされていないのだろう。そんな状況なのだから異存などある筈もない。作戦の可否について諮問を受けた事すらないのだから…今更何か言おうものなら参謀長としての資質を問われかねん…軽い咳をして、閣下が再び話し始めた。
「オットー、作戦会議を忘れたのか?この作戦の目的を」
「忘れてはいないが」
「だったらそんなに心配しなくてもいいだろう…もう少ししたらちゃんと話す。だから今は一杯やってくれ。ローザス少佐、ビュコック長官に貰ったブランデー、出して」
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