第114話 はじめての戦闘(おしごと)
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速接近。当部隊の進行軸に対し一一三三時、俯角五.七度。距離一〇.三光秒」
「帝国軍基準最大戦速で接近中。哨戒隊有効射程まで一八分」
「数、二二。戦艦四ないし五。巡航艦一七ないし一八。小型艦感知できず」
「挑戦信号を継続発信しています。新手の帝国艦隊です」
次々と上がる報告に、先程まで高揚していた戦闘艦橋の空気が、急速に冷却して萎んでいくように感じられる。そんなに気分を表に出さなくてもいいのではないかと思わないでもなかったが、事実上初陣の俺が指揮官では、第四四高速機動集団レベルの『太々しさ』を部下に期待してはいけないだろう。
一度だけ艦長席のビューフォートに視線を送ると、睨んでいるというより『だから先に言っておいた方が良いって言ったろ』という非難めいた顔をしている。決して面倒だからというわけではなく、将兵が長丁場だと考えて攻撃が鈍化することを警戒したつもりだったが、緒戦が予想以上に快勝したので、余計に落差が大きかったようだ。
「ドールトン。マイクを」
「全艦放送でよろしいですか?」
問いに無言で小さく頷くと、コンソールでモードを切り替え、掌に収まる小さなワイヤレスマイクをドールトンは俺に差し出す。
「隊司令のボロディンだ。戦いながら聞いてくれ」
話している俺の声がそのまま戦艦ディスターバンスの戦闘艦橋内に響き渡る。辛うじて声に震えはない。
「実はうっかり言うのを忘れていたが、今日の試合はダブルヘッダーだ。だが司令部では計算済みの話なので、安心して目前の戦闘に専念してくれ」
「クソメンドクサイですが、了解です! 隊司令!」
数秒の沈黙の後で、レーヌ中尉の大声が戦闘艦橋から上がってくる。スイッチを押しっぱなしにしているので、レーヌ中尉の声や艦橋のざわめきは間違いなく他の艦にも伝わっただろう。レーヌ中尉がいの一番に反応してくれたのは、自分が『砲撃演習前』に何をやったか分かっているからだ。
「新たな敵が有効射程に入るまでは、敵巡航艦の掃討を継続せよ」
それだけ言って俺はマイクを切りドールトンに返すが、受け取ったドールトンの顔には奇異と感心の両方が、奇妙に混在して浮かんでいる。
「隊司令は敵の増援を確信されておられたのですか?」
「索敵障害の多い敵地ど真ん中で、静止状態で砲撃演習する初陣集団だからね。我々は」
確信というよりは意図的に誘導した。どうせ見つかるなら不意打ちを受けるより、引き寄せた方が戦いやすいのは当然で。
それに任務に則った航路は、同じ任務に就いている敵も十分想定している。待ち伏せなどができる箇所を捜索するのも、哨戒隊の重要な任務の一つ。それを怠ったばかりか、さらに目立つ恒星重力圏内でバカみたいに砲撃演習を行う『素人集団』を、見逃してやる義理は敵にはない。この際、敵が『まとも
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