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東方守勢録
第五話
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う言って涙を流した。


「つらかったでしょう……ごめんなさいね、もっと早くに助けてあげられなくて」

「そんなことないよ……むしろ、助けてくれないかもって思ってたくらいで……」

「……どうして?」


紫が聞き返すと、にとりは表情を曇らせながらしゃべり始めた。


「私は……たとえ強制だとしてもあいつらに手を貸したんだ……。結果、あんなチップを作って……幽々子さんや椛まで巻き込んで……」

「……」

「そんな自分が許せなかったんだ……だから見捨てられたって仕方ないって……」

「……馬鹿ね」

「……へっ?」


紫はその一言でにとりの言葉を遮ると、彼女の頭を軽くたたいた。


「ひゅいっ!?」

「私たちが仲間を見捨てるわけないでしょう?どれだけ相手に利用されようが何されようが、私たちは仲間であることは間違いないわ。それに、ここはすべてを受け入れる幻想郷でしょ?」

「……そっか……そう……だよね」

「そうよ。だから、また一緒に戦いましょう」

「……うん」


そう言ってにとりは涙を拭き取り、思いっきりの笑顔を紫に返した。


「さて、行きましょうか」

「そうしましょ。ところでにとり、私がここにいたころは開発部にいたはずなのになんでこんなところに?」

「……タイプAのチップに細工を加えて記憶を残すようにしたのは……私なんだ。それがばれてここに……」


タイプAとは、取り付けた相手を自分の思いのままに操ることができるようになる催眠機能を持ったチップである。

当初の予定では、相手に情報が渡るのを恐れて記憶を抹消する予定にしていたのだが、にとりはそれに細工を加えてわざと記憶を残すようにしていたのだった。


「でも……どうして?」

「情報が回ったら有利になるかなって思ったんだ。幽々子さんがタイプAをとりつけられるって聞いたときに細工を施そうって思って……。その分幽々子さんにはつらい思いをさせちゃったんだけど……」

「それはいいのよ。後で自分が何をやってきたかを伝えられるよりも、覚えてる方がましだって私は思うわ」

「……ごめんなさい。でも、少しでもみんなを助けられたらなって……」

「十分役にたったわ。ありがと」


紫がそう言うと、にとりは複雑そうな顔をしてはいたものの、軽く笑みをこぼしていた。


「さてと、長居は無用だし…そろそろ行きましょうか」

「そうだな。とりあえず俊司達と合流するか」

「そうね。にとり、この施設にはあと誰がいるの?」

「雛と椛がいるよ。雛は捕虜監視施設にいるけど……椛は……」


そう言ったにとりはタイプAの実験台にされた椛を心配しているようだった。


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