決意の章
05th
死体
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全部、思い出したのであった。
「……………………」
朝、窓から注ぎ込む陽光に照らされ覚醒したトイレ男は、上体を起こすや否や目を手で覆ったのであった。
「……………………」
動く気力が無かった。
「おぉーい、そろそろ朝飯出来るぞー……って、どした?」
そこへ、先に起きていた友人氏がやって来る。エプロンを着けた彼は手に顔を埋めるトイレ男を見て心配そうに尋ねた。
「……………………」
無視するのもよくないので、トイレ男はベッド横の棚に置いてあった紙とペンを取り、
【記憶が戻った】
そう書いて伝えた。
「おー、そりゃ佳かったな……て訳でもなさそうだが」
今のトイレ男の様子は記憶が戻った喜びとは無縁の、寧ろ逆、記憶が戻った事による様々なマイナス感情が渦巻いている様に見えた。
「……大丈夫か? よければ相談に乗るぜ。あ、でも先に火ぃ止めてくる」
友人氏は正にスープを作っている途中なのであった。
「……………………」
どうせ直ぐ戻ってくるからだろう、開けっ放しにされているドアを見ながら、トイレ男は立ち上がる。ベッドの上に有ったトイレを抱え、紙とペンを持ち部屋を出た。
「お、どうした?」
キッチンに入ると、手に持っているバケツの中身を今正に火に打ち撒けようとしている友人氏が居た。
トイレ男は紙に書き、
【気分悪いからちょっと散歩してくる】
「お、おぅ……解った。でも戻って来いよ! 朝飯二人分で作ってんだから!」
友人氏に軽く手を上げる事で答え、トイレ男は家を出た。
「……………………」
靴を履いて向かう先は、衛兵の詰所。
この時点で、トイレ男は既にやり直す事を考えていた。
襲撃が行われておらず、衛兵達が無事ならばそれでいい。トイレ男は日常に戻る。だが、そうでないだろうな、というのは解っていた。トイレ男が衛兵の詰所に行ったかどうかで襲撃の有無が変わるなんて、そんな筈が無かった。トイレ男が居ようと居まいと白女と黒女は路地裏に居るし、詰所を襲う筈だ。今回だけそうならないなんてとても考えられなかった。
だから、襲撃が行われた跡を見て、次に繋げる。トイレ男の意志はそれで固まっていた。確認して、対策を立てたら、前回の最後と同じ様に、自ら頭を打つける。そうすると決めていた。そうしなければならないと思っていた。
……ここで、一つ可怪しな事が有る。
別に、トイレ男にそんな事をする義理は無い。トイレ男は自分が戻らされる様な自体にならなかった事を喜び日常に帰ってもいい
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