決意の章
05th
トイレ男がトイレと出会う前のお話
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は自分がちっともそんな人間であるとは思えない事だった。
まぁ、友人氏がこんな所でトイレ男を騙す理由も見付からないし、きっとそうだったんだろう。記憶を失った事が益々残念に思えてきた。
「無いか? 何か、こう、好きな食べモンとか」
「……………………」
【トイレは好きだった?】
「あー……いや、別に違ったと思うぞ、俺の知る範囲では。だが、変態の中には自分の性癖を上手い事隠す奴も居るから、断言はできねぇな」
だとしたらトイレ男は記憶は失っても性癖だけは忘れなかった変態という事になる。「…………」、勘弁願いたかった。それにトイレ男はトイレに性的興奮を覚えている訳ではない。芸術的な美を感じているだけだ。このトイレ以外に目を呉れる積りは無い。
「他には?」
【趣味】
「うーん、普段は他人に合わせてたからなぁ、合わせる為に結構色々齧ってたな。でも嫌々やってるって感じでも無かったし、全部うっすらとは好きだったんだろうな。ただ一番好きなのは多分読書じゃね? 知らんけど」
【好きな本】
「色々読んでたからなぁ……すまん、判らんわ」
【好きな人】
「……おいおい、行くねぇ。これ言ったら多分前のお前が恥ずかしがるけど、聴く? 聴いちゃう?」
「……………………(頷く)」
「っしゃ、じゃぁアイツの初恋のエピソードを話してやる。アレは俺達がまだガキ……とはいえアイツが一人で田舎から登ってこれるぐらいの年齢だが、兎に角それぐらいの頃だった?」
そう、トイレ男の質問に友人氏が答えるという形で、トイレ男の『自分知り』は続いた。
???
「おっ、もうこんな時間か」
「……………………」
友人氏が燃料が切れてきたのか段々と暗くなってきたランプを見ながらそう言った。
「明日も仕事だ俺。悪いが、そろそろ寝ていい?」
「……………………(頷く)」
自分に就いては粗方知れたし、トイレ男は満足していたので頷いた。
どうやらトイレ男はこの家からそう遠くない所に住んでいたらしい。勤務先は青果店、恋人は無し(初恋破れて以降春は訪れていない)。親は田舎で畑をやっている。兄弟姉妹も無し、一人っ子。特に気に掛かる様な点の無い、普通の人間だ。
「…………あー」
そこで友人氏が何かを思い出した様に、
「俺が仕事って事はお前も仕事だよな……どうする? お前、働ける?」
「……………………」
トイレ男は沈黙した。
そう、トイレ男は記憶が無いのである。記憶が無いから、働けないのである。しかし明日は働く日だ、働かないといけない。どうすればいいのだろう?
「……まぁ、明日になっ
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