暁 〜小説投稿サイト〜
世界はまだ僕達の名前を知らない
決意の章
04th
君を信じない
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「マエンダだ。ここの詰所を取り仕切っている」

「……………………」

 前衛兵が軽く自己紹介をしたので、トイレ男は軽く頭を下げた。トイレ男が喋れないという事は右衛兵から聴いているのか、前衛兵はそれを疑問に思った様子は無い様だった。

「さて、ここが襲撃されるという話だが?」

 前衛兵は右衛兵の用意した背凭れの無い椅子に座りながら、

「?悪いが、正直今の所信憑性は低い」

 そう言った。

「……………………」

 あれぇー? とトイレ男は右衛兵を見るが、彼は軽く肩を竦めるだけだった。

「理由は二つ。先ず、単純にそちらを信用できない」

「……………………」

 まぁ、それはそうだろうなと思う。喋れなくて、トイレを持っていて、おまけにお目醒め早々暴動を起こす様な男だ。簡単にはっきり言って狂ってる。仮にトイレ男が前衛兵の立場だとしたら、狂人の妄言と切り捨てるかも知れない。

 そうすると直々に話を聴きに来てくれた(或いは聴かせに来た)のはまだいい方なのかも知れない。

「次に、こちらでその情報が一切掴めていない。現在、ここでヤクザやチンピラは拘留していない。彼らにとって重要な物品も無い。だとすると、襲撃の理由は奪還略奪ではなく、()()()()()()()事だろう。それ以外に思い付かない。略奪ならその辺の商店を襲えばいい話だしな。何故国に喧嘩を売るのか、その理由は判らないが……まぁどうせ戦争を起こしたいとかその辺だろう。兎も角、国に喧嘩を売る程の大仕事なら大きな組織が大きな準備をする必要が有る。そしてこの街そんな事が為されていれば我々が気付かない筈が無い……という訳だ」

「……………………」

 成程。よく解る意見だった。

 しかしトイレ男は知っている。敵は理解不能な、常識の通じない奴らであると。感覚を封じる白女に、動きを止め腕を伸ばす黒女。どちらも理外の存在だ。若し、仮にだが、彼女達の様な存在が他にも多数居れば、国に勝てる見込みを持って喧嘩を売る事は可能だろう。彼女達以外にあんな奴らが居るという証拠は無いが、居ないという証明も無い。そして事実として襲撃が有った以上、動機が前衛兵の言った通りだとすれば、居る可能性が高い。ならば大きな組織は兎も角大きな準備は無しに喧嘩を売れる筈だ。

 問題はそれを前衛兵に伝えるかどうかである。

「……………………」

 彼から見てトイレ男は怪しい。とても怪しい。感覚を封じたり腕を伸ばしたりする奴が居る、なんて言ってしまった暁にはトイレ男は完全に狂人認定されてしまうだろう。しかし言わなければ前衛兵の心を動かす事はできない。

 どうする。

「……………………」

「…
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