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世界はまだ僕達の名前を知らない
決意の章
03rd
大口依頼
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「……何故殺す」

「そう言われたから」

「誰に?」

「親に」

 黒男は、前衛兵を殺しに来たという割には意外と会話に応じる積もりが有る様だった。前衛兵はこの機会に謎に包まれたW新月Wに就いて探る事にする。

「親とは何だ」

「うーん、何て言うの? 僕達の親で、命令者?」

(指示役の事か)

 前衛兵はそう推量した。『僕達の親』という部分も気になるが、それは後だ。

「親は何故俺を殺す様に言った?」

「何か大口の依頼って言ってたけど、それ以上は知らない。金の量も、依頼主も」

(依頼? W新月Wは金で人を殺すのか)

 勿論、これまでの全ての殺人がそうであるとは限らないだろう。

 だが、W新月Wに就いて捜査しようとすると、決まってそうとは判らない様に邪魔が入っていたのを思い出すに、国の上層にW新月Wの殺人サービスを利用している存在が居るのかも知れない。

 そこまで考えて、前衛兵は状況の奇妙さに気が付いた。前衛兵は衛兵の中でも要職に就いている人物である。多少ではあるが権力も持っているし、極々僅かではあるが政界にも影響力を持っている。しかし彼が死んだ所で何かが大きく変わるという訳では決して無い。死で以て権力界に影響を与えるには前衛兵の立場は弱過ぎる。強いて言えば彼の治めるこの詰所の環境は後任によるとはいえが大きく変わるだろうが、それで得をする人物というと衛兵かその他の従業員以外に思い付かない。そして彼は彼らが暗殺組織など利用する訳が無いと確信している。

「…………衛兵達は?」

 思考の中に『衛兵』のワードが出てきて漸く思い出した。W新月Wという言葉の威力に思わず忘れていたが、ここに来るまでに必ず通る一階エントランスや二階廊下には多数の衛兵が詰めていた筈だ。

「寝かせた。安心して、殺しはしてない。今回殺すのは君だけだから」

「先程の大きな音は?」

「ディグリーの奴がそれはそれはもう怒りに怒り狂っててね、派手にやっちまったのさ。死んではないから安心して」

「ディグリー?」

 訊き返すも、答えは黒男の口からは述べられなかった。

 バッ! と激しく扉が開き、その前に居た黒男の後頭部を強かに打ったからだ。

「だっ!」

「おいハミー、何でまだやってねぇんだ?」

 扉を開け放った主は黒男と同じく黒い服を着ていて、小柄な黒男に比べ大きな体を持っていた。痛そうに頭を摩る黒男の事など気にする様子も無く仕事が未完である理由を問う。

「コイツ、思ったより強い。僕一人じゃ手に負えないから、手伝って」

「何だそんな事か」

 その会話を聴いて、前衛兵は後悔した。情報を抜き取る前に黒男を処理しておくべきだった、と。大黒男の戦闘能力は
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